(ブルームバーグ):今年度のパフォーマンスが良好な建設株を3つの力がさらに押し上げようとしている。法改正を機に収益力が高まっていく可能性や老朽化した国内インフラの更新、防衛拠点の整備需要が中長期的に続く見通しのためだ。

今年度の建設株指数は29日時点で13%高と東証株価指数(TOPIX)の9%高を上回り、個別では大成建設の29%高、清水建設の27%高など大手ゼネコンを中心に上げが顕著。内需の建設株にプラスに作用した日米関税交渉の不透明感は双方の合意で今後薄れるが、四半期決算の発表を控えファンダメンタルズの潜在的な成長力に投資家も注目し始めている。
楽天投信投資顧問第二運用部の平川康彦部長は、昨年末の建築業法改正で「民間建築での『施主>ゼネコン>下請け』の力関係が逆転」したと指摘。人手不足もあり、「必要経費を施主に主張し、選別受注ができるようになった」と言う。法改正後に受注した工事の進展で、大手ゼネコンなどは「早ければ第1四半期決算から粗利改善の兆しが出てくる」と予想した。
建設業法等改正法では資材価格高騰による労務費のしわ寄せ防止対策などが盛り込まれ、工事契約後に資材価格が高騰した場合、受注者は注文者に請け負い代金の変更協議を申し出ることができる。同時に注文者は協議に誠実に応じる義務を負うことになった。不採算工事の発生による不安定なマージンは建設株のネックだったが、今後は状況が改善する可能性がある。
アムンディ・ジャパンの石原宏美株式運用部長は、建設業界は受注サイクルが長いことから、本格的な利益率の改善は2026年ごろから反映されると分析。「モメンタムは非常にポジティブ」で、ゼネコンを中心に強気にみている。足元の建設セクターの業績推移は順調だ。TOPIXの12カ月先の予想1株利益が3月末に比べ0.5%減少しているのに対し、建設は4.5%増加している。

三菱UFJアセットマネジメントの石金淳エグゼクティブファンドマネジャーは「中長期的にも建設株は2つの観点で恩恵を受ける」との見方を示す。地震や豪雨など自然災害が絶えない中で老朽化したインフラの再構築を急ぐ必要があり、防衛予算の増加で基地や港などの建設や改修需要も増えると予想する。
国土交通省によると、高度成長期に集中的に整備された公共インフラは加速度的に老朽化する見通しで、周辺のライフラインを寸断した埼玉県八潮市の道路陥没事故は問題の緊急性を浮き彫りにした。また、政府が22年に策定した国家安全保障戦略では防衛力の抜本的強化を補完する4分野の一つに「公共インフラ整備」を含んだ。
楽天投信の平川氏は「海外工事さえうまく管理でき、利益の変化率が大きくなれば、大手建設株は三菱重工業やIHIなどに近い存在となる可能性がある」と指摘。「国策に売りなし」との相場格言の下、実際の防衛費増強や地政学リスクの高まりで株価がこの1年で2倍になった三菱重工など防衛関連株と建設株の姿が重ね合わされつつある。

もっとも、今回の建設業法等改正は日本国内の工事が対象で、海外の工事でコスト高騰による採算悪化が表面化する可能性は建設株にとってのリスクだ。過去には大林組や鹿島が海外工事の損失処理で赤字に転落するケースもあった。
大手ゼネコンの建築利益率は27年3月期に10%台を回復すると予測し、セクター格付けを「強気」で継続するSMBC日興証券の川嶋宏樹シニアアナリストは、ダウンサイドシナリオとして建築費上昇や経済環境の悪化による需要減と価格競争による悪化を挙げている。
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