欧州連合(EU)が米国と合意した通商協定を、EU首脳らは擁護する姿勢を見せている。合意によれば、EUは輸出品の大半で15%関税を受け入れる一方、一部の米国製品については関税をゼロにする。

トランプ米大統領と27日にスコットランドで会談した欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、通商合意について、企業と消費者に安定性と予測可能性をもたらすと評価した。EU側は合意内容が米国に有利であることを認識していたが、フォンデアライエン氏は記者団に対し、トランプ氏が当初、最大50%の関税賦課を示唆していたことを指摘し、「われわれの出発点を忘れてはならない」と述べた。

ドイツなど輸出主導のEU加盟国にとって、低水準の関税率は安堵(あんど)をもたらす結果となった。ドイツは昨年、米国向けに新車および自動車部品を349億ドル(約5兆1800億円)相当輸出している。

ドイツのメルツ首相は27日遅くの声明で、「この合意により、輸出主導型のドイツ経済に深刻な打撃を与えかねなかった貿易摩擦を回避することができた」と述べた。そのうえで「欧米の貿易関係でさらなる緩和も望んでいたが、ドイツの中核的な利益を守ることができた」とした。

ブルームバーグ・エコノミクスの試算によると、合意がなければ、米国の平均実効関税率は現在の13.5%から8月1日には18%近くに上昇する見通しだった。今回の合意でこの数値は16%に抑えられることになった。

ただし、交渉においてよりタカ派的な立場を取っていたフランスは、今回の合意がもたらす安定性を評価しつつも、「反威圧措置(ACI)」の発動を提案した。発動されれば、米国のハイテク企業に打撃を与えるとともに、欧州での公共の調達プロジェクトから米企業を締め出すなど、大規模な報復措置が可能になる。

また、オランダのブールマ対外貿易相は、合意内容は「理想的とは言えない」と述べ、欧州委に対し米国との交渉継続を求めた。

さらにドイツのIfo経済研究所のフュースト所長は、今回の合意は「屈辱的だ」と述べ、EUと米国の間にある力の不均衡を反映していると指摘した。

フュースト氏はソーシャルメディアで「欧州は目を覚まし、経済力の強化にもっと注力し、米国への軍事的・技術的依存を減らすべきだ。そのうえで初めて、再交渉が可能になる」と訴えた。

原題:EU Defends US Trade Deal in Face of Mounting Business Criticism(抜粋)

--取材協力:Kamil Kowalcze、Alberto Brambilla、Zoltan Simon、Daniel Hornak、Sarah Jacob、James Regan、William Wilkes.

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