(ブルームバーグ):米国の住宅市場は今春、過去約13年で最も低調な動きとなった。アトランタのベテラン不動産仲介業者グレンダ・ベイカー氏は値下げで対応しているが、買い手側の反応は鈍く、21件の物件の売れ残ったままとなっている。
買い手候補の間には過去数カ月、人工知能(AI)の普及による雇用喪失や、トランプ政権が進める関税措置による景気悪化への懸念が広がっているという。「価格がすべてを解決すると言われるが、不確実性は価格では解消できない」と同氏は語った。
例年であれば、春は不動産市場にとって最も活発な時期であり、小売業におけるクリスマス商戦にも匹敵する。

今年の4月までは住宅ローン金利が低下傾向にあり、物件価格の上昇も鈍り、長く続いた在庫不足もようやく解消の兆しが見えていた。しかし、トランプ大統領が「解放の日」と称して4月2日に発表した関税措置が金融市場に衝撃を与え、住宅購入を検討していた消費者の動きは再び鈍化した。
仲介業者レッドフィンのデータによると、4-6月に米国で成立した住宅売買契約数は2012年以来の低水準となった。当時は、金融危機で崩壊した住宅市場の立て直しがようやく始まったばかりの時期にあたる。

レッドフィンの経済調査責任者チェン・ジャオ氏は、2023年と24年の春も金利と住宅価格の高止まりで住宅市場は低調だったが、今年は経済の先行き不安が加わり、状況が一段と悪化していると指摘。「市場が底を打ったと思っても、さらに下があると思い知らされている。この先何が起きるのか多くの人が分からず、不安を抱えている」と語った。
足元で消費者信頼感が上向き、株式市場も好調を維持するなか、本来は春に成立していたはずの取引が夏に持ち越されるとの期待もある。ただ、キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、トーマス・ライアン氏によれば、その効果は限定的にとどまる見通しだ。
購入希望者の多くが依然として経済的に住宅を所得できない状況にあるため、賃貸市場が活況を呈している。こうした現状についてライアン氏は「住宅を購入できる経済的なゆとりという点では、1980年代以降で最悪の水準だ。この状況に改善の兆しは見られない」と述べた。
原題:US Housing Market Posts Worst Spring Selling Season in 13 Years(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.