欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのカジミール・スロバキア中銀総裁は、経済の大幅な悪化が確認されない限り9月に利下げをすべきではないとの考えを示した。

カジミール氏は28日スロバキア中銀のウェブサイトに掲載された論説で、ECBは現在、貿易を巡る不透明感を見極める「余裕がある状態だ」との認識を示した。

米国と欧州連合(EU)の間の通商合意については「歓迎すべきニュース」だとしながらも、ユーロ圏経済に不安材料がなくなったわけではないと指摘した。

「9月に動かざるを得ないような重大な事態が起きるとは考えていない」とし、「私が行動を起こすには、労働市場の悪化を示す明確な兆候のようなものが必要だ」と続けた。

また、ECBは「将来の金利軌道にあらかじめコミットしない」とし「現在のような動的な環境で、それは愚かなことだ」と指摘した。

カジミール氏は、ここ数カ月にわたり総合インフレ率が2%前後で推移していることについて「確かに安心材料ではある」としながらも、油断すべきではないと強調。

「インフレ上振れリスクは依然として存在しており、引き続き警戒を要する」とし、「例えば供給網のボトルネックが再発し、それが引き金となることもあり得る」と説明した。

また、「インフレ率が持続的に目標を下回るという差し迫った懸念は見当たらない」とした上で、ECBは「新たなデータが示された際に迅速に対応できるよう、必要な柔軟性を維持し続けるべきだ」と強調した。

週末に発表された米・EU通商協定については「投資や消費者信頼感の足かせとなっていた不確実性が和らぐ効果がある」と指摘し、「懸念を緩和し、信頼を回復する助けになる」と評価した。

「新たな環境がインフレにどの程度影響を及ぼすかを見極めるには、時間が必要だ」と付け加えた。

原題:Kazimir Sees ECB Holding Rates in September in Absence of Shock(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.