新興国市場の資産全体に広がる上昇基調が強まる中、新興国の債務に特化したヘッジファンドがリスク回避戦略を積極的に取り入れている。2桁台のリターン確保が狙いだ。

ブルームバーグの指数に基づくデータによると、新興国債務を対象とするヘッジファンドは今年1-6月(上期)に好調な滑り出しを見せ、年間ベースのリターンが13%近くに達し、他の資産クラスを扱うファンドを上回っている。

グローバル資金フローの直近データによれば、新興国債務は依然として好調を維持している資産クラスで、投資家が新興国の国債に対して求める上乗せ利回り(米国債とのスプレッド)は、ここ15年ぶりの小ささとなっている。

こうしたタイトな価格設定に加え、米国の政策動向や世界的な紛争への不透明感が重なり、ヘッジファンドは歴史的な相場上昇の波に乗りつつも、リスク抑制に動いている。

具体的には、ポートフォリオ内の満期が長い債券を、よりリスクの低い短めの債券に入れ替える戦略を採用。また、流動性が高い高格付け銘柄を重視し、潤沢な手元資金を確保している。

7億8400万ドル(約1160億円)規模の「ブルーベイ・エマージング・マーケット・アンコンストレインド・ボンド・ファンド」を共同で運用するアンソニー・ケトル氏は、「こうしたバリュエーションで大きくポジションを組むべきかと問われれば、恐らくノーと答える」と述べ、「ある程度の余力を持つこととキャッシュ水準を高めに保つことが理にかなっている」との考えを示した。

同ファンドは、過去12カ月でプラス17%のリターンを上げている。

もっとも同氏は、依然としてリターンを積み増すには「悪くない環境」で、ファンドがより選別的な姿勢を取ることで、指数連動型の投資と異なり、資産価格の上昇局面であれ下落局面であれ利益を狙えると指摘する。

米政策の先行き不透明感がドル安を招く中で、代替資産への関心の高まりを受けて新興国市場への資金流入が続いている。

多くの新興国は市場心理の改善に伴い、債務危機的な状況から脱しつつあるが、リスク要因としては、イランとイスラエルの間での再度の緊張激化や、トランプ米政権がロシア産エネルギーの買い手などを対象として追加の関税措置を講じる可能性などが挙げられる。

原題:EM Debt Hedge Funds Eye Safeguards as World-Beating Rally Blooms(抜粋)

--取材協力:Jorgelina Do Rosario.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.