(ブルームバーグ):日本銀行は、日米関税協議の合意を受けて、企業行動次第では年内に利上げできる環境が整う可能性があるとみている。複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、日米合意は日本企業にとって不確実性の低下につながり、2%物価目標の実現確度を高めると日銀はみている。焦点は具体的な企業行動とその影響という次の段階に移る。交渉が長引き、関税政策の行方が不透明だった従来に比べ、ヒアリングやデータに基づき日銀が早めに政策判断できる可能性が高まるという。
自動車を含めて日本に対する関税率が一部を除き15%で決着したことは、日銀が経済・物価見通しの前提で想定していた範囲内だと関係者は指摘。企業の投資判断や価格戦略がその収益や賃上げに及ぼす影響の把握には一定の時間が必要となる。関税を巡る世界経済の不確実性は強く、30、31日の金融政策決定会合では0.5%程度の政策金利の維持が決まる公算が大きいという。
ブルームバーグ記事の配信後、東京外国為替市場の円相場は一時ニューヨーク終値比0.1%高の146円82銭まで上昇した。債券市場では先物相場が下落に転じた。
日米合意を受けて、経済同友会の新浪剛史代表幹事が「自動車を含む関税の全面的な引き上げが回避されたことは、企業の現場にとって重要な防波堤となり得る」と発言するなど、財界から評価する声が上がっている。日銀の内田真一副総裁は23日の記者会見で、「今後の企業行動を決める上で大きな不確実性の一つが減少した」と述べ、企業収益や賃上げへの影響を精査していく考えを示した。
金融市場では、日銀の追加利上げは年内に行われる可能性があるとの見方が、足元で約8割に上昇している。日米合意の発表前にブルームバーグが実施したエコノミスト調査で、次回の利上げ時期の予想は来年1月が36%で最も多く、次いで今年10月が32%だった。
日銀は来週の決定会合で新たな経済・物価見通しを議論し、政策判断で重視する基調的な物価上昇率の足取りなどを点検する。関係者によると、日米合意を反映した基調的な物価は、関税の影響で先行きいったんは伸び悩むとの想定に変化はなく、その後に再び目標の2%に向けて上昇していくとの構図も不変だとしている。
経済・物価見通しは、関税に関する前提が想定内に収まる中で、全体的な経済成長率の見方を大きく変える必要はないという。コメなど食料品を中心に日銀の見通しよりも強めで推移している消費者物価(生鮮食品除くコアCPI)について、2025年度は従来の前年比2.2%上昇から上方修正が見込まれている。
(市場の反応を追加して更新しました)
--取材協力:関根裕之、山中英典.
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