(ブルームバーグ):加藤勝信財務相は20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議のため訪れている南アフリカで、米国の関税措置がもたらす不確実性に懸念を表明した。初日の討議を終えた現地時間17日(日本時間18日午前)、記者団の取材に応じた。
加藤財務相は、多くの国が関税措置について発言したと明らかにした。その上で、関税措置は過度な不均衡の解消にとって適切な手段ではないと指摘。「米国の一連の関税措置がもたらす不確実性が経済や金融・資本市場に与える影響を懸念している」と述べた。
米関税措置を巡ってはトランプ大統領が7日、日本からの輸入品に25%の関税を8月1日から賦課すると発表。G20諸国ではブラジルに対し50%、南アフリカに30%など関税を賦課する計画で、中・低所得国に過大な影響が及び、世界中で経済的な圧力が強まる可能性がある。米国不在のG20でどのような情報発信が行われるか注目されていた。
加藤財務相は、世界経済のセッションで「過度な経常黒字や赤字を計上している国では、自国経済の改革を通じた国内不均衡の是正が必要」であり、G20として「お互いの政策に関する冷静かつ建設的な対話と協調を通じて、内外の格差や不均衡の是正に取り組むべきだ」と発言したことを明かした。
今回のG20は、来日中のベッセント財務長官のほか、日本銀行の植田和男総裁も欠席した。
財務省幹部は、多くの会合参加者は世界経済は当初予想されたほどリスクは顕在化しておらず、市場のストレスも収まりつつあるとの見方を示したと語った。ただ、国際機関を含む参加者の多くがリスクを引き続き警戒する必要性に言及したという。
米関税を巡る日米協議には具体的な進展が見られていない。日本政府は新たな期限に向けて合意の可能性を模索するが、トランプ大統領は対日関税は発表通り発動されるとの認識を示している。米国側の交渉窓口を務めるベッセント財務長官は17日、大阪・関西万博でのイベントに参加する米代表団の一員として来日。18日に石破茂首相と官邸で面会する。19日の万博イベントでは赤沢亮正経済再生相が応対にあたる。
トランプ大統領が4月に関税措置を発表して以来、円は不安定な動きを見せている。4月下旬に一時1ドル=139円台まで上昇する場面があったが、参院選挙を前に政治的な不透明感もある中、現在の円相場は148円台で推移している。
加藤財務相は、為替市場の変動に引き続き注意する必要があるとも指摘。世界経済に関するG20討議で、「従来からの共通認識のもと、引き続き投機などがもたらす為替市場での過度な変動に注意すべきことを指摘した」と述べた。
(詳細と背景を追加して更新しました)
--取材協力:梅川崇、松井玲.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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