(ブルームバーグ):トランプ米大統領の看板政策である3兆4000億ドル(約505兆円)規模の税制・歳出法は、共和党が苦労の末に成立にこぎ着けた。しかしこれを米国民から支持を取り付けるという、さらに厳しい課題が共和党を待ち受けている。国民へのアピールを得意とするトランプ大統領でも、一筋縄ではいかない。
CNNとSSRSが共同で実施した最新の世論調査では、約61%の国民がこの法律に反対している。賛成派は39%だった。経済成長に寄与するとの共和党の主張に対し、「効果がある」としたのは29%、「有害」が51%、「大差ない」が20%だった。同調査は16日に発表された。

この法律が不人気なのは政権側も承知している。重視するのは、2026年の中間選挙に向けてトランプ大統領の経済成果として同法をアピールすることだ。ホワイトハウスのジャクソン報道官は「減税にしろ、国境の警備強化にしろ、軍備増強にしろ、すべての有権者に何かしら恩恵があるのがこの法律だ」と声明で述べた。
バンス副大統領は16日、ペンシルベニア州を訪れ同法の利点を支持者に訴え、中間選挙までにどんなに素晴らしい法律か、草の根式に拡散するよう聴衆に促した。ホワイトハウス高官によれば、複数の閣僚が今後、同法のプロモーション遊説を予定している
トランプ大統領補任は最近、NBCニュースとのインタビューで全米を訪ねて支持を取り付ける必要はないとの考えを示唆。「少しだけこの法律について話すかもしれないが、正直なところ、非常に強い支持があるのでその必要はないだろう」と述べた。
チップ収入や残業代への課税停止や、自動車ローン控除など、一時的な措置にもかかわらず世論調査でも受けの良い部分を、共和党は強調する戦略だ。一方の民主党は「富裕層への贈与」と批判し、メディケイド(低所得者向け医療保険)や低所得者向けの食費支援(フードスタンプ)プログラムの大幅削減を前面に押し出している。米議会予算局(CBO)の試算では、同法により約1180万人が医療保険を失う恐れがある。
メディケイドの受給資格に就労要件を追加するという点で、同プログラムが支持されていることが調査に示されている。しかし19歳から64歳の受給者のうち、3分の2近くは就労しているが、残りの約30%は介護や病気、障害、学業のために就労できないことが、超党派の非営利団体、カイザー・ファミリー基金のデータで明らかになっている。
左派系シンクタンク「アメリカ進歩センター」代表のニーラ・タンデン氏は「限定的な税制優遇が各種あるが、医療・貧困対策削減の影に隠れてしまう」と述べた。共和党は不法移民によるメディケイド悪用を防ぐという点も強調しようとしているが、そもそも不法移民はその大多数においてメディケイド受給資格がない。
2024年の選挙でトランプ陣営の世論調査員を務めたジョン・マクラフリン氏は「われわれは守りに入ってはならない」と話す。「民主党が何を支持するのかを有権者に知らしめる必要がある。法案が通らなければ、95%の国民が増税という負担を背負わされていた」と語った。
原題:Trump Struggles to Market His Tax Law That 61% of Voters Oppose(抜粋)
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