欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会が16日に提案した次期中期財政計画案(2028-34年)のうち、総額4000億ユーロ(68兆8800億円)の危機対応基金は、共同債務によって資金調達する方針であることがわかった。事情に詳しい関係者が明らかにした。

関係者によると、欧州委員会は加盟国に対し、この基金のためにEUが各国に代わり財源を借り入れる方針を伝えた。新たに導入される危機対応基金では、加盟国が不測の事態に迅速に対応できるようにするための融資を提供する。こうした枠組みは、近年の経済を打撃した新型コロナウイルスやエネルギー危機のような緊急事態には不可欠とされる。

危機対応基金は、次期中期財政計画の中でも特に議論を呼ぶ要素になりそうだ。共同債務は、財政規律の甘い国々への補助になるとして、加盟国の中には強く反対する勢力があるためだ。EUの次期中期財政計画案は2兆ユーロ規模と、多くの予想を上回った。ドイツはこの案を「受け入れがたい」と厳しく批判している。

EU加盟国代表らとの16日夜の初回協議の中で、欧州委員会はこの新たな仕組みについて、一部の加盟国にとっては受け入れがたいものになるとの認識を示した。欧州委員会は、この基金が助成金ではなく、融資によって資金を配分するものだとも強調した。

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は16日、この基金について「危機の時にEUに迅速対応の手段を与えるものだ。もはや危機は例外ではなく、常態となっている」と述べた。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)はEUの政策形成における大きな転換点となり、約8000億ユーロ規模の復興基金が共同債務により創設された。ただ、ドイツをはじめとする多くの加盟国は、この対応をあくまで一時的なものと位置づけている。

EUの中期財政計画案は、今後、欧州議会や加盟国を代表する理事会、首脳会議で審議される。成立には、2027年末までに全会一致での合意が必要となる。

原題:EU Proposes Joint Borrowing to Finance €400 Billion Crisis Tool(抜粋)

--取材協力:James Hirai、Saim Saeed.

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