共働き世帯の分業のあり方~平等にこだわらない柔軟性・対応力向上の視点~
家事・育児や家計を夫婦が「平等に負担するべき」という意識は若い世代ほど強いが、実際の生活では、これらのすべてをきっちり平等に行うのは現実的ではない。
家事・育児の単純な平等にこだわるのではなく、状況に応じて分担を変えるなど、夫婦で話し合って柔軟に対応することが重要になる。
たとえば、家事に関しては、若い世代を中心に外部サービスの利用に関心をもつ人も多い一方、スキルの男女差も小さい。
新たな手段を取り入れることや、効率化や合理化をはかることも、対処の柔軟性を高め、負担を減らす。
これまでのやり方にこだわらないことが、非常時の対応力を高めることにつながるだろう。
また、子育てに関しては、共働きで子どもと過ごす時間が限られるなか、かかわり方など質の面がより重要になることがある。
夫婦の平等な負担よりも、子どもの成長や安心感等を重視して、夫婦のかかわり方や役割分担を変える工夫が必要ではないか。
家計に関しては、家計簿を共同で管理して常に対話しながら運営したり、キャリアの変化等に伴う収入の変化を補い合うことが重要だろう。
中長期的な資産形成についても、お互いの状況を共有し、共同で行うことが求められる。
これらは、家事・育児や家計を夫婦がすべて平等に担うのとは異なる形で、役割分担の柔軟性や対応力を高めることにつながるものといえる。
夫婦双方が安定的な収入を得ることは、家計運営の安定感を高め、互いが希望する仕事や家庭生活のライフデザインを描きやすくする。
そのため若い世代には、ダブルインカムを想定したライフデザインを描く人が増えている。
現状では、夫の収入を家計の柱とする世帯が多数派だ。しかしながら、妻の収入でも家計を支える世帯が今より増えれば、夫だけでなく、妻の収入を増やすライフスタイルを重視する考え方や行動が広がるだろう。
そのため、当たり前のことではあるが、家事や育児の負担を平等にできないケースや時期が生じることになる。
本来、家事・育児も仕事も、夫婦がお互いに支え合って成り立つものだ。家事・育児の単純な平等や分担にこだわり過ぎず、状況に応じて柔軟に見直していくことも重要なのである。
(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 ライフデザイン研究部 副主任研究員 北村 安樹子)