人間の拡張

一連の状況を踏まえ、BMIが浸透した社会インパクトはどのようなものになるだろうか。高齢化への対応という観点では、年齢を重ねることによる身体機能の衰えに対して、BMIを利用することにより以前と同様の生活を継続することができる。

また、身体障害者にとってBMIを利用することは、各自が抱える個別障害を補完する機能が提供され、社会参加を実現するために有用となる。

一方、健常者にとってはBMIを利用することにより人間が持つ身体、存在、感覚、認知の拡張に繋がる。

つまり、老若男女、健常者、障害者問わず万人にとって、生活の質が飛躍的に向上することに繋がるのではないだろうか。

さらに私たちの五感を電気信号によりコントロールすることができたら、生きている現実の苦しみからの逃避を求めて、BMIが作り出す心地良い仮想現実に没頭する人々が登場するかもしれない。

BMIのテクノロジーが安価にかつ自在に使える時代になり、現実と仮想現実の垣根が低くなったら、筆者も心地良さだけが永遠に継続する世界に没頭してしまうかもしれないと想像してしまう。

貴方は、現実と仮想現実を行き来できる時代が来たときにどちらの世界を選択するだろうか。人生は選択の連続であるが、究極の選択を迫られる時代が来るかもしれない。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー 柏村祐)