(ブルームバーグ):公的年金の国家公務員共済組合連合会は、国内のプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資参入を検討している。委託先運用会社の選定作業に入った。上場株式や債券など伝統的資産と相関関係が低いとされるオルタナティブ(代替)資産投資の一環で分散投資効果を狙う。
小西昭博・運用担当責任者(CIO)はインタビューで、「PE投資では長期的に伝統的資産よりも高いリターンが得られることを期待している。資産が多様化すればリスクも分散しやすい」と参入検討の狙いを述べた。具体的な投資先の決定を運用会社に委託する投資一任契約を想定し、10月末に運用機関の募集を開始した。
資産運用立国を掲げる政府が運用資産を保有するアセットオーナーの共通原則を策定し、分散投資や適切なリスク管理を求めている。世界最大規模の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、PE投資の強化方針を示している。国家公務員共済も参入すれば、国内PE市場の一層の拡大に弾みがつく可能性がある。
米コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーによると、日本のPE市場は2024年に取引総額が3兆1000億円を記録し、4年連続で3兆円超となった。1000億円超などの大型案件も増え、引き続き企業による事業分離や株式の非公開化が取引の主流になっている。
国家公務員共済の9月末時点の運用資産額(厚生年金保険給付積立金)は10兆8800億円。そのうちオルタナ資産への投資残高は235億円。運用資産全体に占める比率の上限を2024年にそれまでの1%から5%に引き上げたが、現状では0.2%程度にとどまる。PEも含め新たな投資対象の組み入れにより、運用の多様化を図る。
国家公務員共済と同様に公的年金という位置付けで、同じモデルポートを持つGPIFのオルタナ投資比率は9月末で1.62%となっている。国家公務員共済は11月下旬、財務省の年次有識者会議で、新たな投資対象としてプライベートエクイティーへの投資を計画していると報告した。
PEを含むプライベート資産については、流動性の低さや資産評価の不透明性を指摘する声もある。小西氏は投資対象とするPEについては国内案件とすることで「情報も取りやすく、リスク管理がしやすい」と説明。運用者を選択する「目利き力」が問われると述べた。
国家公務員共済が現在、投資対象としているオルタナ資産は、銀行による企業向け貸付債権といったバンクローンのほか、私募リートを含む不動産、インフラファンドなど。今回は同時にバンクローンの運用委託先についても新規募集を再開した。小西氏は「幅広いマネジャーに応募してもらいたい」としている。
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