男性の育児休業を家事・育児スキルの向上の機会だととらえる

子どもの誕生などのライフコースの変化にかかわらず、それぞれがキャリアプランを描き続けるためには、家庭での協力が非常に重要であるということが見えてきた。

特に、女性側は、配偶者との家事・育児の分担の満足度に応じて、キャリア形成意識に大きな差が生じている。ただし、これはあくまで「満足度」であって、分担の平等さそのものではない。

完璧な平等を目指すというよりも、夫婦双方が納得し合える形で役割を分担し、それぞれが家庭生活も職業キャリアも前向きに取り組めることが理想だろう。

その際、妻自身が自ら引き受けたいなら問題はないものの、「夫に家事・育児のスキルがないから、やむを得ず妻が多く引き受けている」のであれば、本質的に納得した分担とはいえない。

真の納得感を得るためには、夫婦ともに一定の家事・育児スキルを身につけたうえで、分担方法について話し合いを重ねるべきである。

では、どのようにして夫婦の家事・育児スキルのバランスを取ることができるのか。

例えば北欧のノルウェーやスウェーデンでは、父親専用の有償の育児休業期間があり、両親が交代で取得することが基本である。

これは、女性の育児休業期間を短くし、職業キャリアへの影響を少なくするだけではなく、男性が単独で育児休業を取得して家事・育児を一人で担うことで、家庭での役割の自立した担い手に変化するという効果も期待できる。

一方、日本では、育児休業を男女が交代で取得する事例は少なく、男性の育児休業取得により、夫の昼食づくりなど、妻の家事負担がかえって増したとの声も少なからず聞こえてくる。

そのようななか、2025年4月から、子の出生後の一定期間内に夫婦の両方が14日以上の育児休業を取得した場合に、給付率が80%(手取りで10割相当)になる出生後休業支援給付の制度がスタートした。

これにより、今後、男性の育児休業取得者はより増加していくと考えられる。このタイミングを活用し、夫婦で家事・育児スキルを均等にすることを目指すのも有効なのではないだろうか。

男性が育児休業中にこれらのスキルを高めることができれば、復帰後も家事・育児分担が円滑になり、夫婦両者のキャリア形成にも良い影響をもたらすと考えられる。

加えて、家事・育児を外部化することで、負担の総量を減らし、分担しやすくすることも一つの改善策である。

今回の当社アンケートによると、高校生以下の子どもと同居する就労者のうち、「家事代行サービスやベビーシッターなどの育児支援サービスを積極的に利用している、またはしていた」と回答した人は全体の約4人に1人である(「あてはまる」4.0%、「どちらかというとあてはまる」20.1%)。

経済産業省の調査報告書によると、家事支援サービスを利用しない理由の最多は「所得に対し価格が高いと思われるため(20.01%)」、次いで「他人に家の中に入られることに抵抗があるため(15.56%)」であった。

このような心理的抵抗感については、回数を重ねることで軽減できる可能性があるため、まずは期間や回数を限定してトライしてみることも一案である。

加えて、外部化することで、従来無償で担われてきた家事・育児は、それなりの費用がかかる「労働」だということを夫婦で認識するきっかけにもなりうる。自治体や勤務先によっては、家事・育児支援サービスの補助制度を整備している場合もあるので情報を調べてみるのもよいだろう。