性別役割への無意識な期待に、一人ひとりが気づくことから
最後に、夫婦間の家事・育児分担は、当事者だけで解決できる問題ではないことを指摘しておきたい。日本においては、男性が家庭で家事・育児を担うことに対する職場の理解が十分とはいえない。
たとえば、女性が子育てや家庭との両立のために勤務時間を短縮することは一般的に受け入れられているが、男性の場合にはこのような選択をする人は依然として少ない。
そのため、男性が家事・育児に積極的に参加するためには、女性以上に強い意志と周囲の理解を得るための説明などが求められる現状がある。
本稿の読者のなかにも、「男女とも家事や子育てに参画すべき」と考えつつも、男性社員が「子育てのために勤務時間を短縮したい」と発言した場合、全く驚かない人は少ないのではないだろうか。
反応してしまう背景には、男性に対して「フルタイムで仕事に専念すべきだ」という無意識の期待が存在していることがある。
社会学では、「社会的な役割が、人の行動やアイデンティティを方向づける」とする考え方があり、人は性別役割に期待される行動をとる傾向がある。
つまり、私たちの無意識の期待や反応の積み重ねが、男性の家庭進出や女性のキャリア形成の妨げの一つともなりえる。
今後、男女ともに家事・育児に責任を持つことが当然となる社会をつくるためには、私たち一人ひとりが性別に対する無意識の期待に気づき、それらを見直していく必要がある。
(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 ライフデザイン研究部 副主任研究員 福澤 涼子)