日本銀行の増一行審議委員は1日の就任記者会見で、金融政策運営に関して、利上げを急いでよい経済状況にはないとの見解を示した。

増委員は、利上げについて「昨今の経済情勢をみると急いでいい状態とは言えなくなっており、こういうことを見ながら決めていくという総裁の発信に全く違和感ない」と指摘。その上で「ゆっくりがいいという意味ではなく、慎重に考えながら、実質金利がマイナスだから急いだ方がいいとは思っていない」と語った。

トランプ米政権の関税政策の影響については、1日公表の6月日銀短観がしっかりした内容になったことを踏まえ、「企業の受け止め方として悲観論が減っていることは確かだ」と説明。一方で関税を巡る日米交渉などの行方を見極める重要性を指摘し、「予断を許さない状態が続いている。その中で金融政策をどうするかは、そこをよく見ていかなければいけない」と述べた。

増審議委員(1日・都内)

増委員は米関税を巡る内外経済の先行き不透明感を踏まえ、金融政策運営は慎重に対応していく姿勢を示した。前任の中村豊明氏は9人の政策委員の中で最もハト派と位置付けられていたが、増氏の就任で政策委員会内のバランスに変化が生じるかが焦点となる。

金融政策に対する姿勢はハト派かタカ派を問われ、増氏は「極めて白紙だ」とした。政策スタンスの分布図を描く場合は、「一番真ん中に置いてほしい」と語った。

日銀は6月17日の金融政策決定会合で金融政策の維持を決めた。植田和男総裁は記者会見で、米関税の影響についてハードデータはまだしっかりしているとしつつ、年後半には「悪い動きが見られるのではないか」との認識を示した。

上下のリスク

内外経済の下振れリスクが意識されている一方で、国内物価は足元で日銀の目標を上回る3%台で推移するなど想定よりもやや上振れて推移している。増氏は、上下リスクの存在に言及した上で、「どちらに行くか見極めて行くしかない」と指摘。植田総裁が基調的な物価上昇率は2%に達していないと説明していることに「違和感はない」と語った。

また、足元で1ドル=142円台で推移している現行の為替水準については、「良いか悪いかは業界によって違う」と指摘。円安によって海外拠点の利益が評価益として膨らんでいるが、「企業は、いい業績になっている実感を持っていない状態だ」とし、物価上昇という形で消費者に悪影響が及ぶ点も指摘した。

増氏は三菱商事で財務・経理部門を中心に歩み、日本公認会計士協会の理事も務めた。2%の物価安定目標の実現に向けて、米関税政策の企業行動への影響が注目される中、総合商社出身で企業財務に精通している増氏の知見が期待されている。

6月30日に任期満了で退任した前任の中村氏は、昨年3月のマイナス金利解除など大規模緩和からの転換や、その後の2回の利上げに対して反対票を投じてきた。中小企業への影響などを懸念したのが理由だった。

(就任会見での発言を追加し、見出しやリードを差し替えて更新しました)

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