(ブルームバーグ):欧州連合(EU)は、米国との通商交渉で輸出品の多くに10%の一律関税を課す案を受け入れる用意があるが、医薬品、アルコール、半導体、商用航空機といった重要分野では米国に関税引き下げの確約を求めている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
EUはまた、自動車・部品に対する25%の関税、および鉄鋼・アルミニウムに対する50%の関税についても、実質的な関税引き下げとなる割当枠や免除措置を引き続き求めているという。
EUの執行機関、欧州委員会は、こうした取り決めが可能なら、まだ米国有利ではあるものの、受け入れられるとみていると、関係者が匿名を条件に語った。
9日までに通商合意に至らなければ、EUのほぼ全ての対米輸出品の関税率は50%に引き上げられる見込み。
欧州委の報道官はコメントを控えたが、ワシントンに交渉チームが滞在中で、2日にシェフチョビッチ欧州委員(通商担当)が合流することを認めた。
「われわれは全面的かつ真剣に交渉を行っている。交渉で互恵的な解決策を見いだすことが、われわれにとって引き続き望ましい結果だ」と報道官は述べつつ、「満足のいく結果が得られない場合、あらゆる手段と選択肢が検討対象にある」と続けた。

この一報を受けてS&P500種株価指数は一時12ポイント下落したが、その後上げに転じた。
INGの投資戦略責任者、ビンセント・ユビンス氏(ブリュッセル在勤)は「EUと米国の間で貿易合意が成立するとの期待が、市場全体に楽観を生んでいる」と指摘。「まだ半分埋まっていないのではなく、半分埋まったとの見方を投資家はとっている」と述べた。
大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長は、「合意に向けた真の政治的意思がある」として、EUとの貿易協定について「楽観的な見方を持っている」と述べた。
EUやINGのアナリストがまとめたデータによると、2024年に米国はEUにとって最大の輸出先で、528億ユーロ(約8兆9100億円)相当の自動車・自動車部品が輸出されていた。鉄鋼・アルミニウムの輸出はドイツやイタリア、フランスを中心に24億ユーロ相当に上ったと、ウィーン国際経済研究所のデータは示した。

ブルームバーグは先に、EUと米国の双方が9日までに暫定合意に達し、その後交渉を継続することに自信を深めていると報じていた。合意には関税および非関税障壁、主要米国製品の購入、追加的な協力分野の概略などが盛り込まれる見通しだと、関係者は述べた。
EU側は暫定合意を「最善のシナリオ」と引き続きみているが、暫定合意がどれだけ維持される見通しかについては明言を避けている。
関係者によると、自動車や金属など米国が導入済みの業種別関税や米政権が計画中の将来の関税について、事前に協議されることを欧州委は確実にしたい考えだ。
EUは手続きの簡素化によって非関税障壁の多くに対応する意向で、液化天然ガスや人工知能(AI)技術など幾つかの分野の戦略的購入を模索すると提案した。共通する経済安全保障の課題について、米国と協力することにもオープンだという。
EUの試算によると、米国の関税は現時点でEUから米国への輸出の約7割、3800億ユーロ相当を対象としている。

関係者によると、欧州委は6月30日、米国から関税と非関税障壁、戦略的協力分野に関する案を提示されたと加盟国に伝えた。具体的な税率などの詳細は共有されなかったという。
交渉期限が迫る中、EU当局者が想定するシナリオは以下の四つだ。不利ではあるが受け入れ可能な条件で合意するか、米国に大きく有利な内容でEU側が拒否する。さらには、期限延長で交渉継続か、トランプ氏が交渉を打ち切り関税を引き上げるかだ。
EUは交渉と並行して、交渉が不調に終わった場合の対抗措置の準備も進めている。関係者によると、最後のシナリオが現実となった場合、EUは全ての報復手段を行使する可能性が高いという。
原題:EU to Accept Trump Universal Tariff But Seeks Key Exemptions (4)(抜粋)
(CEA委員長のコメントを加え更新します)
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