(ブルームバーグ):米軍による未曾有(みぞう)のイラン核施設攻撃を受け、世界中のトレーダーや各国政府は緊張状態にある。イランが報復を警告する一方、イスラエルにはイラン攻撃を緩める兆しが全く見られない。
「バンカーバスター(地中貫通爆弾、MOP)」を投下してイラン核施設を破壊するというトランプ米大統領の決断の結果、中東情勢は未知の領域に入り、すでに関税戦争で深刻な不確実性を抱える世界経済は、地政学的リスクにもさらされることになった。
ロイター通信の記者1人が複数の米当局者の情報を匿名で引用し、Xに投稿したところによれば、米国はイランが近く、米軍に対して報復攻撃を行う可能性が高いとみている。当局者の1人はロイターに対し、イランの報復措置は1-2日以内に実施される可能性があると語った。米国は引き続き外交的な解決も探っているという。

応酬続く
イランは23日にもイスラエルに向けてミサイルを発射し、イスラエル軍はイランの軍事施設や空港への攻撃を続けた。イスラエルのネタニヤフ首相は22日の記者会見で、イランやガザ地区での軍事作戦を継続する方針を表明している。
米国による22日の大規模な作戦は、フォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの核施設を標的とし、125機の航空機、潜水艦発射の巡航ミサイル「トマホーク」による攻撃、さらに実戦で初めて使用された14発のバンカーバスターの投下で展開された。
22日に国連で開かれた緊急安全保障理事会の会合では、イランのアミール・サイード・イラバニ国連大使が「テヘランの対応の『時期、性質、規模』については、イラン軍が決定する」と述べた。最高指導者ハメネイ師の傘下にあるイラン革命防衛隊は、中東地域の米軍基地を標的にする可能性を示している。
イランのアラグチ外相は23日、ロシアのプーチン大統領とモスクワで会談した。プーチン氏は、この攻撃を「完全に根拠のない、正当化されないものだ」と非難し、「現在の状況からどう抜け出すかを話し合いたい」と述べ、イラン側との協議に意欲を示した。
とはいえ、イランは孤立状態にある。主要な同盟国のロシアと中国は支持を表明するだけで、傍観者の立場だ。ロシア当局者は、イランと1月に締結した戦略的協力条約について、相互防衛義務は含まれていないとしている。イランが何年にもわたり武器や資金を提供してきた武装勢力も、同国を支援する戦いに加わることができないか、消極的だ。
警戒強める米国
トランプ氏は、いかなる報復に対しても、米軍による核施設への攻撃を「はるかに上回る」力で応じるとしている。また同氏は、イランの体制転換の可能性にも言及したが、米国とイスラエルの当局者は22日、そのような目標はないと強調した。
ワシントンやニューヨーク、ロサンゼルスの警察は、宗教施設、外交施設、公共施設での警戒を強化した。現時点で信頼性のある差し迫った脅威は確認されていないとしつつも、当局は警戒の必要性を強調している。国土安全保障省は、イスラエルとイランの戦争で米国は9月22日まで「脅威の高まった状況」にあると発表した。
原油、一時急騰
23日のアジア市場の取引開始時、原油価格は約6%上昇したが、その後は大半の上げ幅を縮小し、ロンドン時間午前11時30分時点で、ブレント原油は1バレル=77.48ドルで取引されている。投資家がイランの報復シナリオと世界のエネルギー供給へのリスクを見極めようとする中、米国株先物は下落している。暗号資産(仮想通貨)ビットコインは、5月初め以来の10万ドル割れとなった。
ブルームバーグ・エコノミクスのジアド・ダウド氏らアナリストは「紛争が拡大すれば、原油価格上昇のリスクが高まり、インフレに上向きの圧力が加わる可能性がある」と指摘する。
イランが世界の原油と天然ガスの主要な輸送路であるホルムズ海峡の通航妨害に踏み切れば、世界経済が不安定な現状に、エネルギー価格の急騰という懸念が加わることになる。
国営テレビによると、イラン議会は22日、ホルムズ海峡の封鎖を求めた。だが、このような措置は、イランの約半世紀の歴史でも前例がなく、ハメネイ師の承認がなければ実行できない。ハメネイ師の事務所は、最高安全保障会議(SNSC)と調整しながら、この種の重大な決定を下す権限を持っている。
地域の海軍部隊は、特に米国と関係のある船舶が一段と高いリスクにさらされる可能性があると警告した。世界で最も多くのタンカー運航能力を保有するギリシャは、ペルシャ湾への進入を検討している船主に対し、再考するよう注意を促した。
22日には、約200万バレルの原油を運搬可能な2隻のスーパータンカーがホルムズ海峡で進路を急転換し、同海域に入った後に突然引き返した。
濃縮ウランの所在
トランプ氏は、米軍が攻撃した3つの核施設が「完全に破壊された」と語ったものの、特に地下深くに位置するフォルドウの濃縮施設については、より慎重な見方もある。ヘグセス国防長官やダン・ケイン統合参謀本部議長を含む米政府高官らは、被害の全容はまだ明らかになっていないとしている。
イランの核計画を監視する国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は22日、国連安保理会合で、フォルドゥの施設の状態や、イランが保有する60%濃縮ウラン400キログラム超の所在について現時点で誰も把握していないと述べた。
IAEAのイラン代表を務めるナジャフィ氏は、米国の攻撃を「侵略行為」と非難し、「国際的な不拡散体制に根本的かつ回復不能な打撃を与え、現在の核不拡散防止条約(NPT)枠組みが無効であることを決定的に示した」と述べた。同氏は、イランがNPTからの脱退を検討しているかどうかについては言及しなかった。
原題:World Braces for Iran’s Response After US Strikes Signal New Era、Iran’s Payback Threat for US Strike Keeps World Powers on Alert、Putin Slams ‘Unprovoked’ Attack on Iran as He Meets Tehran Envoy、Iran Says Nuclear Arms-Control Treaty Irreparably Damaged by US、US Sees Risk of Iran Retaliation Within Two Days, Reuters Says
(抜粋)
(第3段落を加えます)
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