デジタル社会における子どもの「責任」と保護者の「役割」

このように、保護者のネットリテラシーの違いや、子どものスマートフォン利用に対する関心度の差が、子ども同士の情報取得環境の格差を生み出しており、その結果、本来であれば使用できないSNSやアプリを、ある子は自由に活用できてしまうという状況が生まれている。

もちろん、現代のようにデジタルデバイスが普及した社会において、「スマホを持っていない」「SNSを使っていない」ことが仲間外れの要因になるケースもある。

そうした背景から、「友達と同じような情報環境にいたい」「会話に置いていかれたくない」と考える子どもや保護者の気持ちも理解できる。

さらに、推し活やエンタメ消費に関しても、主要な情報源はSNSであり、TikTokなどが若年層にとって“当たり前”の娯楽メディアになっている。

このような環境では、たとえ年齢制限が設けられていたとしても、それを乗り越えてSNSにアクセスしようとする動機が高まるのは当然とも言える。

一方で、フィルタリングやペアレンタルコントロールを丁寧に活用して情報環境を制限している家庭の保護者にとっては、その制限の“外”から子どもが情報に触れてしまう現実に対し、不安やもどかしさを感じることもあるだろう。

例えば、友達からの伝聞や実際に情報制限のないスマホを使わせてもらう(見せてもらう)など、親の目が届かない場面で、子どもが本来は保護者とのルールでは触れることができない情報と接触する機会が日常的に存在している。

あくまでも理想論ではあるが、子ども自身が、今スマホを使えているという自由に対して責任を持ち、親とのルールやサイトやサービスの利用規約を守ることが、スマホにまつわる様々な問題から自分たち自身の身を守る手段になるはずである。

しかし、結局のところ、興味を持った子どもは、たとえ家庭で制限されていても、何らかの手段でそのコンテンツにたどり着こうとするし、「知りたい」という欲求は、容易に制御できるものではない。

だからこそ、ゾーニングやペアレンタルコントロール、家庭内の使用上のルールは、“ただ制限するため”のものではなく、子どもとの間で“適切な距離感”を一緒に考えるプロセスなのであり、大変重要なアクションと考えるべきではないだろうか。

(※なお、記事内の注記については掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください)

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員 廣瀬涼)