モディ政権の雇用対策では不十分との指摘も

インドにとって、雇用問題を解決することは喫緊の課題です。

中国以外のサプライチェーンを構築したい外国企業からの投資を呼び込むためにも、労働市場の歪みを克服する必要があります。

もし十分な雇用が創出されなければ、国民一人ひとりの所得は上がらず、2047年までに先進国入りするというインドの目標は遠のくばかりです。

現在でも一人当たりの所得は世界平均より1万ドル以上も低く、国内の貧富の格差はさらに拡大する恐れがあります。

インドには世界有数の富裕層が存在し、すでに大きな格差が生じている中で、この問題は社会の分断を深めることにも繋がりかねません。

モディ政権もこの課題の重要性を認識しており、最新の予算案で対策を打ち出しています。

製造業での雇用促進や、200万人を対象とした5年間の職業訓練プログラムなどがその例です。

しかし、これらの政策だけでは不十分だという声が上がっています。

単に雇用を増やすだけでなく、質の高い雇用を生み出すためには、大企業がインドへ進出し、政府と協力して雇用を生み出す環境を整える必要があります。

輸出の強化、製造業支援の拡大はもちろんのこと、何万もの政府機関の欠員を埋めることも、インドの若者たちの助けとなるでしょう。

労働法の簡素化も、企業の活動を活発にし、雇用増加に繋がる重要な要素です。

企業がもっと積極的に人を雇いたいと思えるような仕組みを作らない限り、将来に希望を持つ若者たちが直面している「仕事がない」という現実の壁は、いつまでも高く立ちはだかることになります。

約12年間、正社員の職を探し続けているというチャンダン・クマールさんの願いはシンプルです。

クマールさん:
「私は安定した仕事に就いて、子どもたちに良い教育を受けさせ、より良い未来を与えたいのです」

彼の願いは、インドのすべての若者の願いでもあります。

経済成長の恩恵が国民一人ひとりに届くよう、インドは雇用問題という大きな課題に、今こそ本気で向き合うべき時を迎えています。