(ブルームバーグ):日本証券業協会が債券販売を巡る不正行為の実態調査に乗り出したことが、複数の関係者への取材で分かった。主要証券会社に対して、水増し需要報告の実態などについて説明を求めた。
複数の関係者によると、日証協は国内外の主要な金融機関9社を対象にアンケートを実施した。個人投資家向けの社債や地方債で売れ残りがあったにもかかわらず、発行体に完売と報告した事例の有無などについて情報提供を求めた。提出期限は5月末だった。
アンケートでは発行登録前に投資家に接触し、買い手を早期に囲い込む行為についても報告を求めた。日証協は今回の調査で実態を把握し、不正行為の是正と業界の自浄を促す狙いだ。
日証協はブルームバーグの取材に対し、コメントを控えた。
日本のクレジット市場では投資家需要の過大報告が常態化しているとの指摘が根強く、発行体は実態と異なる情報に基づいて発行額や金利に関する判断を強いられている。特に個人向け社債は金融リテラシーの低い個人投資家が不利な条件で購入するリスクがあるなど、情報格差という構造的な問題が存在する。引受会社にとっても、水増しに伴う後処理や説明責任の増大で業務が煩雑化しかねない。
日証協が実態調査に乗り出したのは、市場の信頼回復と制度改革に向けた第一歩といえる。日本銀行が金融引き締めを進める中、資金調達コストは上昇し海外発行体を含む市場参加者のニーズは多様化。欧米に比べ透明性が低い現行ルールを見直して社債市場をより健全で持続可能な形へと進化させることが、今まさに問われている。
ニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長は、「市場では価格発見機能が的確に働くことが重要だ」とし、さもなければ投資家はいなくなると述べた。また、主幹事は金利上昇局面で依然として低い発行コストを求める発行体と、高い利回りを求める投資家との間で「板挟みになっている」との見方を示した。
自主規則
日本のクレジット市場で需要の水増し報告は公然の秘密とされてきた。透明性向上を図るため、日証協は2021年に自主規則を導入。主幹事が発行体に需要情報の詳細を開示することを義務付け、違反すると非公表の警告、悪質なケースは実名公表などの処分の対象となる。
ただ、主幹事を置かずにシンジケート団が引き受ける一部の地方債や、個人向け社債などは対象外だった。ブルームバーグが入手した資料によると、日証協は3月下旬にワーキング・グループを開き、規則やルールの網をかいくぐった銘柄で「虚偽報告」が横行している現状や対応策について議論。実態調査の準備を進めていた。
実際に地方債市場では4月、東京都や愛知県が発行した10年債が相次いで売れ残った。東京都と愛知県の担当者は当時、引受会社から完売と聞いているとブルームバーグの取材に答えていた。

ブルームバーグの集計によれば、24年度の国内社債の発行総額は15兆8700億円と過去最高を記録、個人投資家向けの大型債も散見された。
(第7段落に識者コメント、最終段落に社債発行額を追記しました)
--取材協力:間一生.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.