日米中の技術力の差はどこにあるのか
日本は世界に先駆けてヒューマノイド開発に取り組んできた国です。HondaのASIMOや早稲田大学の1970年代のロボットなど、歴史は長いものの、ビジネスとして成功した例はありません。
これまでヒト型で注目を集めてきたのは、ボストン・ダイナミクスというアメリカのロボットスタートアップでした。バク転などのアクロバティックな技を決める動画が注目を集めました。

「ボストン・ダイナミクスがすごいのは制御です。ロボットの体をどういうタイミングでどう動かしたらいいかを人が一生懸命計算していました」
しかし、ここにきて中国の企業が急速に技術力を高めています。
「今はディープニューラルネットを使った強化学習によって、中国の会社のロボットでも制御ができるようになった。人がやるよりAIにやらせた方がうまくできるようになってしまったんです」
中でも力をつけているのが、Unitreeというスタートアップ。ボストン・ダイナミクスにも匹敵する性能を実現し、すでに一般販売も開始。しかも300万円という、従来にはなかった破格の値段です。

こうした技術的な変化により、以前は高度な専門知識がなければ作れなかったロボットが、今は参入障壁が下がり、より多くの企業が開発に参加できるようになっています。
なぜ日本からヒューマノイドのスタートアップが生まれないのか
小倉さんは日本からヒューマノイド・ロボットのスタートアップが生まれない理由について、「一番端的に言ってしまえば、投資する金がないというのが一番簡単です」と説明します。
アメリカのスタートアップは1000億円規模の資金調達をしていますが、日本ではそれほどの資金を集めることは難しいのが現状です。
「日本はヒューマノイドを昔から開発しています。しかし事業化に至らず、産業として根付くレベルには行かず、それを10年に1回ぐらい繰り返しているように感じます」

さらに、日本は過去の失敗経験が多いため、ヒューマノイドのブームに対して「冷めた目で見てしまっている」と小倉さんは指摘します。
「ロボットベンチャーを起業しても、投資を募る際にも難しさがあります。ヒューマノイドロボットのビジネスは宝くじを買うようなもので、成功確率は1%ぐらいしかないと思っています。上場企業が100億円を1%の成功確率のところにぶっ込めるかといったら、多分ぶっ込めないような気がします」