任天堂は5日、家庭用ゲーム機「スイッチ2」を発売した。実に約8年ぶりとなる新型機に世界中のゲーマーが色めき立つ。一部のフリーマーケットサイトでは転売とみられる出品も確認されており、スイッチ狂騒曲はしばらく収まりそうにない。

都内の家電量販店では、購入者から喜びの声が上がった。ビックカメラ池袋本店で一番乗りでスイッチ2を手にした埼玉県入間市の会社員、高橋幸志さん(54)は「4時間並んだかいがあった。家族と一緒にマリオカートで遊びたい」と話した。練馬区の会社員、佐久間善和さん(51)も、「初日に手に入れられるとは思わなかった」と笑顔だった。今回搭載されたマウス機能を使うソフトが今後増えるのを楽しみにしていると話した。

ZEN大学産業史研究センターゲーム担当の浜村弘一副所長は、「今までと違った客層が集まる可能性がある」と指摘する。パソコン(PC)のハイエンドゲームを展開しやすいスペックになるなど自社タイトル重視からサードパーティーに門戸を開いた印象があり、「任天堂が静観してきた領域へのアプローチをしてきた」と話す。

家庭用ゲーム機メーカーは、PCやスマートフォンなど異なるプラットフォーム間でもオンライン対戦ができるクロスプレイ対応を進めてきた。ゲーム人口の拡大や収益性の向上につながるメリットがある。米マイクロソフトやソニーグループが先行しているが、スイッチ2ではスペックが上がることでクロスプレイ対応が進みそうだ。

英国の店舗でもスイッチ2購入のための行列ができた

国内の販売では転売防止の工夫も話題になった。フリーマーケットサイトなどに不正出品される問題に対処するため、メルカリやLINEヤフー、楽天グループらは任天堂に協力し、違反した出品の削除を行うなど厳しい対応をとる。だが、一部のフリマサイトでは、転売目的と見られるスイッチ2の出品が多数見られ、「単体新品未使用品」「本日発送」などの表示とともに、6万円台後半から7万円台の値付けがされていた。

株式市場では5日午前の取引で任天堂株が反落した。一時、前日比でプラスとなる場面も見られたが、前場の終値は同0.7%安の1万2005円と精彩を欠いた。

米国では抽選会も

スイッチ2は国内専用モデルが税込み4万9980円で販売される一方、米国向けは449.99ドルと円換算で1万5000円近く高く設定された。

先代機と比べた価格の引き上げに米国のファンからは不満も漏れるが、いまのところ需要は堅調だ。全米のゲームストップの店舗では4月、ゲーマーらが予約注文のために列をなした。ベストバイなどでは発売前、供給台数に限りあるものの各店舗でスイッチ2を販売すると顧客に通知した。

任天堂はニューヨークとサンフランシスコの直営店舗で抽選会を行った。購入者1人につき1台までだが、当選した顧客は6月16日までの受け取りが可能だ。このほかディスカウント百貨店などを展開するターゲットは、オンライン販売を6日まで行わないため、店舗に直接足を運んだ顧客は運が良ければ購入できるかもしれない。

米関税政策に注視

一般的に電子機器はほかの製品より利益率が低い。それでも小売業者がスイッチ2を販売するのは、顧客が利益率の高いゲームソフトや周辺機器を購入することに期待するためだ。

ブルームバーグ・インテリジェンスの小売りアナリスト、リンジー・ダッチ氏は、電子機器の需要喚起に必要なのはこうした新製品の登場だと述べる。普段ならアマゾンでしか買い物しないような客でも、深夜開店のお祭りのようなイベントでしか買えないとなれば、足を運ばざるを得ないからだ。

米関税政策の影響に対する警戒感もある。ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ネイサン・ナイドゥ氏は、米国の関税政策次第では販売価格が約590ドルになる可能性を指摘しており、価格上昇が需要を冷え込ませる恐れもある。

ゲームコンサルタント、カンタンゲームスのセルカン・トト代表は、「スイッチ2は任天堂のすべてであり失敗という選択肢はない」と語る。新型機は同社のプラットフォームとしての勢いと将来への自信を生み出すためにも強力なデビューを果たす必要があるという。

(購入者の声などを追加しました)

--取材協力:Jason Schreier、Cecilia D'Anastasio.

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