日本株のベテラン投資家として市場で知られるデービッド・スノーディ氏は、7月にエンゲージメント(対話)ファンドを立ち上げる。投資先企業に株主優待などの還元策を提案し、企業価値の向上につなげることが狙いだ。

老舗ヘッジファンドの根津アジア・キャピタル・マネジメントの創設者である同氏がブルームバーグのインタビューで明らかにした。新たに設定する「根津エンゲージメント・ファンド」は配当や優待、自社株買いなど株主還元のバランスについて助言し、数百万ドル規模のサイズを目指すという。

スノーディ氏は、日本企業の株主還元の組み合わせが効率的でないことが多いと指摘。企業の資金は今後3-4年にわたり、従業員に費やすよりも株主に使う方が多くなると予想した上で、「還元総額を変える必要はなく、組み合わせを変えることが大きな効果をもたらす」と述べた。

新ファンドはキャッシュフローやバランスシートが強固で、余剰資金を持つ15-20銘柄に投資する考えだ。多角化企業の価値が低く評価されるコングロマリットディスカウントや株主資本利益率(ROE)、株主資本配当率(DOE)で割安な銘柄にも目を向ける。具体的な投資先候補について、スノーディ氏は言及を避けた。

スノーディ氏は日本株投資で30年以上の経験を持ち、根津アジアの創設前はソロス・ファンド・マネジメントの日本代表やタイガー・マネジメント東京オフィスのマネージング・ディレクターを務めた。株主優待について3年ほど調査を続けており、現在は日本証券業協会の株主優待の意義に関する研究会のメンバーだ。

同意なき買収が増加

エンゲージメントを通じ、「足元の時価総額よりも一層高い価値で上場を維持したいと考えている企業」の発掘を目指すスノーディ氏。新ファンドの立ち上げを考えるきっかけとなったのは、セブン&アイ・ホールディングスなど時価総額上位企業も含む同意なき買収提案の増加だった。

新ファンドの立ち上げに際し、ユナイテッド・マネジャーズ・ジャパンやニッセイアセットマネジメントなどで運用に携わってきた河北博光氏を採用。スノーディ氏によると、国内の販売会社と提携し、富裕層の個人投資家向けにも提供していく方針だ。

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