(ブルームバーグ):決算発表シーズンを通過した日本株市場で今後買われるのは、米トランプ政権の関税の影響をいち早く業績見通しに織り込んだ銘柄群となりそうだ。こうしたシナリオを描くストラテジストの脳裏には5年前の記憶がある。
最新の決算発表では、米関税による影響を今年度の業績見通しに反映させるかどうかで企業の対応が分かれた。株式市場ではこれまでのところ、影響の開示を避けた銘柄群の株価が相対的にやや強い動きを見せているが、形勢は今後逆転する可能性がある。
ノムラ・シンガポールの須田吉貴クロスアセット・ストラテジストは、関税の影響を開示した企業はそうでない企業よりも将来的に業績下方修正に迫られるリスクが小さいとして、株価は今後アウトパフォームする可能性があると話す。
須田氏が参照するのは2020年の新型コロナウイルス流行時だ。「当時もガイダンスの開示を見送った企業が6月中旬くらいまではアウトパフォームしていたが、その後は強烈なアンダーパフォームに転じた」と言う。その上で、関税影響を非開示とした銘柄は今後の業績下方修正リスクから、次回決算に向けてショートの候補にもなりやすいと警鐘を鳴らす。

コロナ禍では多くの日本企業が業績予想の開示自体を見送った。今回は予想自体を控える動きは限られた一方、関税の影響を考慮しない形で出した企業が多い。
5月末の鉄鋼の輸入関税引き上げ発表に見られる通り、米国の関税政策は朝令暮改の様相を呈し、企業が業績見通し開示に消極的となることには投資家も理解を示す。だが、決算発表シーズンを通過した今、こうした環境下で影響を精査する努力をした企業を評価する声が投資家の間で増えつつある。
三菱UFJアセットマネジメントの友利啓明エグゼクティブファンドマネジャーは、関税の影響を全く入れていない企業もある中、「ロジカルに考えてその影響を最大限入れた企業は評価したい」と話す。
こうした見方が表れてきたのが建機大手2社の株価だ。日立建機は今年度の純利益が1.9%増える予想だが、関税については不確定要素が多いとして見通しには織り込まなかった。これに対し、コマツは決算発表時点で打ち出されていた関税を全て業績に織り込んだ上で、30%の減益見通しとした。

4月下旬の決算発表直後は日立建機の株価がややアウトパフォームしたものの、5月中旬以降はコマツが盛り返している。
住友生命保険の村田正行バランスファンド運用部長は、コマツは「アナリストが好みそうな分析を上手にやっていた」と評価する。
業績見通しに関税の影響を反映させている企業について「先行きが不透明で投資家も迷っている状況の中、一つの道しるべを示すという意味では高く評価されるべきだ」と村田氏は話す。経営のクオリティーという面からもポジティブだとし、株価にも徐々に反映されていく可能性があると述べた。
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