豊田自動織機の株価が13%安と、2024年8月以来の日中下落率となった。トヨタ自動車などが公表した株式公開買い付け(TOB)価格は1株当たり1万6300円と、東京市場の3日終値を11%下回った。

【アナリストや投資家の見解】

シティグループ証券の吉田有史アナリスト

  • トヨタやグループの株式持ち合い解消が一気に進むためガバナンス(企業統治)の観点でポジティブ、少数株主の賛同を得られるかが今後のポイント
  • 27年3月期利益コンセンサスと同業他社の株価収益率(PER)10倍程度、保有株の価値から試算した理論価値は1万5000円程度
  • ただ、関税影響など不透明感は強く、適正価値を算出しづらい。世界情勢が平時に戻る前提で事業価値にPER15倍を適用すると株主価値は1万8000円程度になる
  • 株価はいったんTOB価格に収れんするとみられるが、TOB実施まで半年程度あり先行きはやや不透明

英アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)の坂井一成・日本調査責任者

  • 提案されているTOB価格は豊田織の潜在的な企業価値を非常に低く評価している
  • 価格面での交渉は合計3回の提案のみで、公開買い付け者とトヨタグループ以外の潜在的買収者からの提案価格がどの程度であるかなど、公正担保措置として積極的なマーケットチェックも実施されていない
  • トヨタ陣営で実質的には経営支配権といえる株式保有がされている中でのTOB提案であり、一般株主の利益保護に十分に配慮するべき

コムジェスト・アセットマネジメントのポートフォリオ・マネジャー、リチャード・ケイ氏

  • TOB価格は持ち株を除いた豊田織の本業をあまり評価していないのではないか
  • トヨタの自社株買いは一時的に評価されるとはいえ、財務余力を将来の投資に使うほうが株主利益の観点ではありがたい
    • 東京証券取引所も絡んだガバナンス改善のプレッシャーを受けて、必ずしも最適な行動をしない企業が目に付くようになった
    • 持ち合い株を手放して自社株買いをすることが、例えば低い金利で将来への投資をすることより正しい道なのか、考える必要がある

黄国英資産管理の張雄略アナリスト

  • TOB価格は市場の予想を下回っており、アクティビスト(物言う株主)が参入してより高いTOB価格を要求しても驚かない
  • このようなTOBのリスクは常に高く、ケースバイケースだ。セブン&アイ・ホールディングスは失敗事例の一つ
  • 資本効率と株主アクティビズムは一般的に高まっているため、こうした機会がもたらすリターンは全体的にプラスだと思うが、リスク管理が重要

(投資家のコメントを追加しました)

--取材協力:田村康剛.

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