(ブルームバーグ):トランプ米大統領が掲げる政策が米国の財政赤字を拡大させながら、経済成長を促進できない場合、2026年には米ドルの「大幅下落」リスクは高まる。英銀スタンダードチャータードが警告した。
同行はリポートで、米国の政府債務と対外債務が近年同時に膨らんでいると指摘。このため、外国人投資家が将来的な米債務拡大の影響を懸念すれば、ドルや米国債からの資金流出につながる可能性があると分析した。
同行のG10通貨調査責任者スティーブ・イングランダー氏は、米国の財政赤字拡大は国内貯蓄を減らす一方、国外資金への依存を強め、経常赤字の拡大につながると説明。
トランプ氏の政策が成長をもたらさず外国人投資家の信頼が失われれば、高水準の経常赤字の維持は困難になると指摘した。
「経済や金融市場が混乱した場合、外貨建て債務が多いほどドルの下落リスクは大きくなる」と説明した。
関税や税制政策が成長を刺激できなければ、外国の債権者は米債務の持続可能性に懸念を強め、それが「金利上昇またはドル安の形でリスクプレミアムとして表れる可能性が高い」と付け加えた。
ドルと米国債は、トランプ氏の高関税導入とその混乱による打撃を既に受けており、一部投資家は米資産の安定性に疑問を呈している。
トランプ氏は貿易政策での交渉姿勢を示しているが、投資家は財政問題のほか、税制改革法案から生じる新たな債務の規模に注目先を移している。
現時点で外国人投資家はトランプ氏の政策が成長を後押しするかどうかを見極めるため、伝統的な安全資産から完全に資金を引き揚げることは控えているとスタンダードチャータードは指摘。
税制法案が承認されれば今年中に経済に好影響を与える可能性はあるが、その効果は26年半ばから27年にかけて薄れる見込みだとイングランダー氏は予想し、成長と債務への長期的な影響に対する懸念が浮上するだろうと論じた。
貿易政策が「一貫性を欠いた」ままの場合、投資家はドルへのエクスポージャーを増やすことに消極的になり、ドルに「顕著な」動きを引き起こす可能性があるとも指摘。
中国と欧州の経済成長見通し改善は、さらにドル売り圧力を強める可能性があると付け加えた。
原題:Dollar May Face ‘Major’ Drop in 2026, Standard Chartered Says(抜粋)
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