(ブルームバーグ):トランプ米政権がウクライナとロシアの和平交渉から後退しつつあるように見える中、教皇レオ14世が、バチカンで交渉の場を提供すると提案した。米国生まれで初の教皇となったレオ14世にとって、重要な局面だ。
バチカンはこれまでも、外交上の微妙な問題について仲裁役を果たしてきた。ただ、この問題は、就任から2週間も経たない教皇を、明確な結末の見えない争いに巻き込むリスクがある。
トランプ米大統領は19日、「教皇に代表されるバチカンは、交渉の主催に非常に興味を持っていると表明している」と述べた。さらに、ソーシャルメディアには「プロセスを開始しよう!」と投稿した。
イタリアのメローニ首相は、準備作業がすでに始まっているとし、交渉はすぐに開始される見通しだと述べた。

トランプ氏はウクライナとロシアの戦争の早期終結を目指してきたが、欧州首脳らは、同氏が解決に向けた取り組みから後退し、ウクライナや同盟国を孤立させるとの懸念を抱いている。ロシアのプーチン大統領は先週、ウクライナ代表団との協議のため、トルコに低位の政府高官を派遣したものの、交渉は行き詰まっている。
バチカンは、教皇が19日に米国のバンス米国副大統領と会談したことを明らかにし、バチカンが交渉に関与していることを示唆した。ウクライナのゼレンスキー大統領はX(旧ツイッター)で、バチカンが「ウクライナとロシアの直接交渉の舞台となることを快諾してくれた」ことに感謝すると述べた。
イタリアは、必要に応じて会談の開催を準備しているが、外交筋によると、会談が開催されるかどうかは不確実で、ロシアの姿勢の変わり方次第という。イタリアはこの戦争に関してウクライナを強く支持し、欧州諸国と共にロシアに制裁を科しており、ロシアが参加を拒む可能性がある。イタリアは国際刑事裁判所(ICC)の加盟国で、プーチン氏は訪問すれば逮捕されかねない。
バチカンは、2014年の米国とキューバの関係正常化促進、1978年のチリとアルゼンチンの領土紛争の解決など、世界的な紛争の調停に貢献してきた。また、イスラエルとパレスチナの和平交渉にも積極的に取り組んでいる。
バチカンの報道官はコメントの要請に応じなかった。ロシア国営タス通信は、大統領府のペスコフ報道官が、ロシア政府は提案を承知しているが、決定は下されていないと述べたと伝えた。
原題:Trump Draws New Pope Into a Tricky Role on Russia’s War(抜粋)
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