ウォール街で新興国市場投資を信じてきた金融機関や運用会社が、ようやくリターンの改善を目にしつつある。

モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント、AQRキャピタル・マネジメント、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、フランクリン・テンプルトンなどが、新興国株に好機が到来したとみている。リターンは米国株が上昇していた長年にわたり、取り残されてきた。

BofAのマイケル・ハートネット氏は新興国株を「次なる強気相場」と位置付ける。AQRは向こう5-10年で現地通貨ベースで年間6%近いリターンをもたらし、ドルベースで4%の米国株を上回ると予測する。

米国株の指標、S&P500種株価指数は過去数週間に反発したが年初来では16日終値時点で横ばいだ。一方、新興国株指数は年初から10%上昇している。

過去15年間にわたりS&P500種指数が400%余り上昇したのに対し、新興国株はわずか7%高にとどまっていた。

新興国市場への期待が高まる背景には、ドル安や米国株相場の乱高下、米国債の安全資産としての信頼性への疑問がある。トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争もあり、米市場から他に目を向ける投資家が増えている。

ムーディーズ・レーティングスによる米格下げの要因となった債務拡大を巡る懸念も、米市場の優位性継続に逆風となっている。

一部の投資家は、米市場に代わる投資先として円やドイツ国債、ユーロに目を向けた。だが、リスク許容度がより高い投資家は、危機時には新興国市場から米国に資金を移すという従来の戦略を見直しつつある。

フランクリン・テンプルトンの投資ストラテジスト、クリスティ・タン氏は「ドル下落リスクは投資家にとって警鐘だ」とし、新興国債を米国債の代替として勧める。「米国例外主義は当面終わったとみている」とも話した。

 

2年前に新興国市場の時代が到来したと指摘していたモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの副最高投資責任者(CIO)、ジタニア・カンダリ氏は「ついに契機が訪れた」と語っている。

原題:Wall Street Banks Say Emerging Markets’ Wasted Years Are Over(抜粋)

--取材協力:Zijia Song、Matthew Griffin.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.