中国企業2社が、チリでのリチウム加工プロジェクトの計画を断念した。バッテリー用金属であるリチウムの価格下落を受けた決定で、鉱物輸出に付加価値を加えようとするチリ政府の取り組みにとって打撃となる。

チリ政府は7日、電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)と金属グループの青山控股集団が、炭酸リチウムをバッテリー向けカソードに加工するプロジェクトを進めないことを確認した。両社の中南米の代表者はコメント要請に応じなかった。

計画の中止についてはチリ紙ディアリオ・フィナンシエロが先に報じた。リチウム価格は2022年後半の最高値から約90%下落し、生産各社は財務の立て直しを迫られている。EV需要が鈍化し始める中で市場への供給が増え、高コストの生産業者は赤字に陥っている。

チリの政府報道官、エチェベリ科学・技術・知識・革新相は7日、CNNチリのインタビューで「これらの企業は投資の意向を取り下げ、計画を中断した。基本的には、世界のリチウム市場に関連した商業的理由によるものだ」と説明した。

BYDは2023年4月、チリのソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ(SQM)が生産する炭酸リチウムを優遇価格で取得する権利を得た。25年末までにカソード用のリン酸鉄リチウムを生産する工場の稼働を目指す計画だった。しかし、価格の急落を受け、BYDはチリ当局とのプロジェクト条件について合意に至らなかった。

BYDの李柯(ステラ・リ)執行副社長は昨年8月、交渉が続いているため生産開始は遅れる見通しだと述べていた。

資産家の項光達氏が所有する青山も23年にチリのリチウム加工プロジェクトで優先的なアクセスを認められた。

これらのカソードプロジェクトは、世界最大のリチウム埋蔵量を誇るチリでの足がかりを企業に提供するものであり、チリにとってはバッテリーのサプライチェーンの下流工程に進出する取り組みを後押しするはずだった。

マルセル財務相は7日、サンティアゴでの記者会見で、「解決策を模索したが、実現できなかった。それでも、リチウム戦略は継続する」と述べた。

原題:BYD, Tsingshan Drop Chile Lithium Projects After Price Rout (1)(抜粋)

--取材協力:Valentina Fuentes.

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