中国の起業家サンディ・ゼン氏は、20年以上にわたり米国の家庭向けにペット用の食器やおもちゃを販売するペット用品事業を築いてきた。ゼン氏は現在、他の市場を真剣に検討している。

広東スーパー・テクノロジーの共同創業者であるゼン氏は「今年はアジア市場が大きく伸びるだろう。経済が活況を呈しており、われわれは製品デザインを一部調整すればいいだけだ」と話す。同社は広州で開催された世界最大規模の展示会「広州交易会」に出展した。今年は米国が大規模な対中関税を課した中での開催となった。

ゼン氏を含む多くの中国の輸出業者は、米中貿易戦争のあおりを受け、米国向けの注文が保留になっている。米中両国による通商協議が予定されているが、輸出業者は米国外の顧客にも目を向けている。

米国向けの商品が積み上げられている中国・浙江省の工場(4月28日)

20社余りの中国製造業者を取材して明らかになったのは、トランプ大統領の通商政策に一歩も引かない中国政府への支持だ。経営陣は最悪の事態に備える。つまり、米国の買い手が大幅に減少した世界だ。

しかし新たな市場を見つけることは容易ではない。本来ならば米国向けだった安価な中国製品が自国に振り向けられるのを防ぐため、各国が自国経済の保護に動くとみられるからだ。

貿易戦争は既に中国経済に打撃を与え始めており、中国の製造業活動は4月に2023年以降で最も縮小し、製造業PMIの新規輸出受注は22年12月以来の低水準に落ち込んだ。

米フロリダ州で売られていた中国製のクリスマス商品

米国からの買い手は少なかったものの、広州交易会は活況を呈した。中国企業によれば、中東とアフリカからの訪問者数が急増した。主催者が発表したデータによると、ロシアやインドを含む主要新興国グループ「BRICS」諸国からの見込み客は24%増加し、中国が提唱する「一帯一路」参加国からの見込み客は17%の増加となった。一方、欧米からは3%増にとどまった。

東南アジアは近年、中国最大の輸出先となっている。中国商務省傘下にある電子商務研究所の杜国臣所長によれば、多くの東南アジア諸国でオンライン小売りは2桁の伸びを記録しており、中国輸出業者にとって大きなチャンスとなっている。

しかし中国外での製造拠点の構築・拡大を計画していた多くの企業は高い不確実性のため、今のところ計画を凍結している。

南米と欧州にクリスマス照明を販売する珠光グループの輸出マネジャー、ロー・ユアン氏は「数年前にカンボジアで土地を購入し、建設を開始した」と述べ、「しかし関税問題や頻繁な政策変更のため、計画を中止し、建物を貸し出すことにした」と語った。米国との不安定な関係を踏まえ、同社は米国との取引を断念したという。ユアン氏は「今は米国からの問い合わせがあっても、基本的には応じたくない」と話した。

原題:China’s Factories Start to Imagine World Without American Buyers(抜粋)

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