米作家スティーブン・キング氏にベストセラー小説「シャイニング」を編み出すインスピレーションを与えたホテルが、地方債で資金調達し施設を拡張する計画だ。ホラー愛好家をはじめ、映画業界での存在感を高める狙いがある。

コロラド州エステスパークにあるスタンリー・ホテルの所有者は、約3億ドル(約430億円)を月内に借り入れる。債券資料で明らかになった。今回発行される債券の大半は、州の機関を通じて発行される非課税債。ホテル事業などの収益を担保とする。

地方の観光振興を巡り、州やホテル所有者、文化団体、映画関係者は約10年にわたって取り組んできた。その延長戦上で、新たなイベントセンター設置を含むプロジェクトとなる。2027年に開催地をユタ州からコロラド州ボルダーに移す予定のサンダンス映画祭の効果も取り込みたい考えだ。

スタンリー・ホテルは1909年に開業した全196室の独立系ホテルで、米国家歴史登録財にも指定されている。約40エーカー(約16万平方メートル)の敷地内には、屋外プールやスパ、レストラン、コンサートホールなどの施設がある。

ロッキー山脈国立公園の入り口付近に位置し、この地域で唯一のフルサービス型ホテルだ。ボルダーからは約40マイル(約64キロメートル)離れている。

作家のキング氏によると、74年に夫妻でこのホテルに宿泊したが、冬季閉鎖前の最終日で、客がほかに誰もいなかった。その状況が、幽霊の物語の舞台としてふさわしいと感じたという。

だが、小説の着想を決定づけたのはその夜見た悪夢だった。当時、まだ幼かった息子がホテルの廊下を消防用ホースに追われながら叫ぶという夢だったと、同氏は自身のウェブサイトで振り返っている。

その後、この小説は80年にジャック・ニコルソン主演で映画化された。「スタンリーは歴史と風格があるホテルだ。私にとってそこはゴーストでいっぱいの場所だ」とキング氏は代理人を通じて語った。

債券発行で調達した資金で、ホテルには65室の客室が新設され、新しいロビーや到着エリア、イベントセンターが建設される予定。この地方債に格付けはなく、投資リスクは高め。一般投資家には販売されない。

債券資料によれば、輸入建材に対する関税がコスト上昇を招き、それが最終的にホテルやイベントセンターの収益に悪影響を及ぼすリスクがある。

 

原題:‘Shining’ Hotel Borrows $300 Million to Cater to Horror Fans (1)(抜粋)

--取材協力:Philip Tabuas.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.