23日の日本市場では株式が大幅高。トランプ米大統領がパウエル連邦準制度理事会(FRB)議長解任の意図はないと表明した。米政権の強硬な姿勢が和らいで景気不安が薄れ、リスク選好ムードが広がった。円は対ドルで143円台まで急落した後、下げ幅を縮小。債券は中長期債が下落した。

トランプ大統領は22日、ホワイトハウスで記者団に対し、パウエル議長について「私には彼を解任する意図は全くない」と語った。大統領はこれまで議長を利下げに動かないと繰り返し批判、ハセット米国家経済会議(NEC)委員長は18日にトランプ氏が議長を解任することができるかどうか検討中だと話していた。

また、ベッセント米財務長官は22日、関税を巡る中国との対立は米中にとって持続不可能であり、緊張緩和の道筋を見つけなければならないと発言。緊張緩和は近く実現するとの見方を示した。ホワイトハウスのレビット報道官も貿易交渉の進展に言及し、米関税政策に対する楽観的な見方が広がった。

T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、中国への関税が米国の国内総生産(GDP)に与える影響が懸念されていたため、「ベッセント氏の発言がかなり評価されている」と話す。トランプ大統領がパウエル議長の解任を否定したことは、トランプ政権は市場が混乱するとすぐ態度を軟化させることを示し、マーケットがポジティブに反応する要因だと述べた。

株式

株式は大幅高。トランプ政権の姿勢軟化で経済の先行き不安が後退し、電機や自動車といった輸出関連株中心に買われた。TOPIXと日経平均は2日以来の高値を付けた。

野村証券の沢田麻希ストラテジストは、午後に円が再度売られたことで日本株は堅調だと指摘。米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が4営業日ぶりに反発したことを受けて、東京エレクトロンやアドバンテストなど半導体関連株が日経平均の上昇に寄与したと述べた。

パラソル総研の倉持靖彦副社長はきょうの株価上昇について、トランプ氏の発言に加え、中国との関税に関するベッセント財務長官らの発言、インドとの基本合意の報道など「貿易交渉の進展に対する期待が背景にある」と指摘。世界景気の減速懸念から売られていた銀行株は、金利上昇を受けて反発したと話した。

週末にかけて決算発表が本格化する。業績見通しを非開示とする企業が出る可能性があり、「相場反転のきっかけになるとは考えにくい」と野村証の沢田氏はみている。

為替

円相場は下落。トランプ大統領がパウエルFRB議長を解任する意図はないと表明して急落した後は、米長期金利が時間外取引で低下していることから、円を買い戻す動きも出て下げ幅を縮小した。

オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、FRB議長解任はもともと難しいとみられていた上、ベッセント財務長官がまだ中国側と会っていない中での円急落だったため、投資家は冷静になっているのではないかとみる。「タームプレミアムの低下による米長期金利低下に合わせた動きで、仲値で実需筋のドル売りも出ていた可能性がある」と語った。

22日に一時139円89銭と昨年9月以来の高値を付けた円は、けさは143円台前半まで急反落した。その後141円台まで下げ幅を縮小した。

外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、ベッセント財務長官とトランプ大統領の発言だけで約2.5円も円安が進んだことを挙げ、積み上がった円ロングポジションの巻き戻しが影響した可能性が高いと指摘。「ひとまず過度の懸念は後退したが、これでドル離れが止まるかどうか確信が持てていない」と述べた。

債券

債券は中長期債が下落。パウエルFRB議長の解任不安が払拭されてセンチメントが改善、先物や中期、長期ゾーンは売りが優勢だった。一方、40年債の利回りが急低下するなど超長期債は堅調だった。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎債券ストラテジストは、市場の混乱がひとまず落ち着いて株とドルが上昇したため、円債は反動もあって売られたと指摘。短いゾーンが安くなった半面、超長期は堅調で利回り曲線はツイストフラット(平たん)化したと述べた。

新発国債利回り(午後3時時点)

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:船曳三郎、アリス・フレンチ、横山桃花.

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