(ブルームバーグ):21日の日本市場では円相場が対ドルで一時1%超上昇。トランプ米大統領が連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の解任を検討していることが危惧され、ドル売りが加速した。日本株は反落し、日経平均株価の下げ幅が一時500円を超えた。債券は先物や超長期債が下落。
円相場は対ドルで一時1ドル=140円62銭と2024年9月以来、7カ月ぶりの高値を更新した。トランプ米大統領がFRBのパウエル議長の解任を検討していることが表面化し、中央銀行の独立性に対する警戒感が広がり、円やユーロなど主要通貨に対するドル売りを促した。
東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、トランプ関税政策やパウエル議長解任の検討が米国の信認を低下させているとし、「想定以上にドル安が進んでいる」と指摘。日米財務相会談についても「円安是正が協議されることが警戒され、円買いが入っている面もある」と述べた。
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が23日から米ワシントンで開催されるのに合わせ、加藤勝信財務相とベッセント米財務長官が為替政策などを議論する方向で調整が行われている。自国の輸出産業を重視するトランプ米政権が日本に対し、円安・ドル高の是正を要求するとの見方が市場では根強い。
為替
東京外国為替市場の円相場は対ドルで1%超上昇する場面があった。SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、トランプ米大統領が非関税障壁のトップに為替操作を挙げているとし、「日米財務相会合で為替がテーマになると言われているため、円が買われている」と見ていた。
今週にも開かれる日米財務相会談で、為替協議が行われることへの警戒感も円の支援材料だ。会談についてNHKは、24日の開催で最終調整を進めていると報じた。関税交渉に関連して円安是正が協議されるとの思惑が強まっている。
三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの井野鉄兵チーフアナリストは、ドル全面安には「本当にFRB議長を解任するのかという米国の信認の問題がある上、パウエル氏の退任後はトランプ大統領の意に沿ったハト派的な議長になるとの思惑もある」と語った。
株式
東京株式相場は3営業日ぶりに反落。円高の加速で企業業績の先行き懸念が広がり、自動車や機械など輸出関連株が下げ、トランプ米大統領の政策による経済の不透明感から銀行や保険など金融セクターも安い。東証33業種は29業種が下落し、上昇はパルプ・紙や陸運など4業種。個別ではトヨタ自動車やソニーグループがTOPIXを押し下げた。
三井住友DSアセットマネジメントの武内荘平シニアファンドマネジャーは、米国を中心にした世界景気の減速懸念がある中、「海外需要に依存しているより、内需主導の企業に業績安心感がある」と指摘。為替は日米協議の可能性や両国の金融政策の方向性の違いから円高に振れやすいと話した。
投資資金の一部は輸入コストの低下などむしろ円高の恩恵を受ける銘柄に向かい、ニトリホールディングスや神戸物産、王子ホールディングスが高い。王子HLDは午後に配当性向の引き上げや自社株買いを発表した。
債券
債券相場は超長期債を中心に下落。超長期ゾーン対象の流動性供給入札に対する警戒感から売りが優勢となった。財務省は22日、残存期間15.5年超39年未満を対象にした流動性供給入札を実施する。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは、17日の流動性供給入札(残存期間5年超15.5年以下)が弱い結果で、あすの入札にも警戒感が出ていると言う。3月の公社債の投資家別売買動向で信託銀行が超長期の売り越しに転じている点にも触れ、「リバランスの売りが意識されて超長期需給が緩んできている」との認識を示した。
ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、残存10年以下の金利はトランプ関税策に伴う質への逃避で上昇が止まっているが、超長期ゾーンは止まっていないと指摘。先行きが見通しづらい中、「22日の流動性供給入札を終えても、投資家は買いに慎重姿勢ではないか」と述べた。
日銀は21日午前に国債買い入れオペを実施。対象は残存期間1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下、10年超25年以下で、買い入れ額はいずれも前回オペから据え置き。オペ結果によると、応札倍率は全年限とも前回オペから低下し、需給が引き締まり方向にあることが示された。もっとも、落札金利などを踏まえた結果は無難で相場への影響は限定的だった。
新発国債利回り(午後3時時点)
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:船曳三郎、アリス・フレンチ、横山桃花.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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