ロボットが多様な作業を学べるよう支援する人工知能(AI)ソフトウエアを開発するスタートアップ企業、フィジカル・インテリジェンスが新たな資金調達ラウンドで6億ドル(約940億円)を調達した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。同社の企業価値は56億ドルと評価されたという。

非公開情報だとして匿名を条件に話した関係者によると、今回の調達ラウンドはアルファベット傘下グロースファンド、キャピタルGが主導し、既存投資家のラックス・キャピタルやスライブ・キャピタル、アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏も参加した。

新規の投資家としてインデックス・ベンチャーズやティー・ロウ・プライスも加わった。フィジカル・インテリジェンスのバリュエーションには調達額も含まれる。

フィジカル・インテリジェンスとスライブ、ティー・ロウ・プライス、インデックス、ラックスはいずれもコメントを控えた。一方、キャピタルGは参加を確認した。ベゾス氏の担当者にもコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。資金調達の一部内容については、米メディアのジ・インフォメーションが先に報じていた。

AI技術の進展を背景に、投資家やテック企業首脳の間でロボティクスへの関心が再び高まっている。人間に近い見た目や動作を目指すロボット開発に注目が集まっており、フィギュアAIやスキルドAI、アジリティー・ロボティクスなども多額の資金を調達した。

グーグル傘下のディープマインドやアップル、メタ・プラットフォームズもロボティクス関連の取り組みを探っている。

フィジカル・インテリジェンスは2024年、グーグルのディープマインド出身の研究者やスタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校の学者らによって設立された。カロル・ハウスマン最高経営責任者(CEO)は以前、ブルームバーグの取材に対して「あらゆるロボットや物理的デバイスを、ほぼあらゆる用途で動かせる」汎用知能、いわば脳を構築することを目指していると語っていた。

ロボティクス向けAIモデルの構築には、チャットボットのようなソフト開発とは異なる課題がある。テキストだけでなく、映像など多様な入力から学び、それを現実世界での物理的な動作に変換する能力が求められるためだ。

フィジカル・インテリジェンスはすでに、試験的にロボットアームにソフトを導入し、衣類の折りたたみ、コーヒーの抽出、箱の組み立てなどの作業を実施させている。今週には新しいAIビジョンモデルも発表。強化学習手法を取り入れることで、タスク遂行中のロボットの能力を高める狙いがある。

同社はソーシャルメディアへの投稿で、ロボットアームの動作動画を公開した。新たな強化学習手法により、ロボットのスループット(1時間当たりの処理能力)は2倍余りに向上する可能性がある。試験ではロボットが3時間稼働し、1作業あたり平均3分で処理、箱の組み立ては約2分半で完了したという。

原題:Robotics Startup Physical Intelligence Valued at $5.6 Billion(抜粋)

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