最近まで石油トレーダーは、値動きが停滞しレンジ相場の原油市場で利益を得るのはほぼ不可能だと嘆いていた。だがここ2週間半の出来事には、「願うものは注意せよ」という格言が当てはまるかもしれない。

原油市場はこの短期間に、停滞状態から一転して大きな価格変動に見舞われるようになった。きっかけはトランプ米大統領が2日に発表した上乗せ関税だ。これにより貿易戦争は激化した。さらに、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」は、それから1日もたたずに、予想より大幅な増産を実施する計画を表明し、市場を驚かせた。

この二つの衝撃で、米原油先物価格は約7%安と、ロシアのウクライナ侵攻以来最大の下げを記録。主要なボラティリティー指標は急上昇し、半年ぶりの高水準に達した。

だが、その後の市場乱高下も、これまで同様に利益を上げるのが難しい状況だとトレーダーらは指摘する。矛盾するようなニュースが次々に飛び出し、予想できない価格変動を招いているためだ。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)の商品トレーディング世界責任者ジョージ・カルトラロ氏は「この変動性は中期見通しを立てられるようなものではない。状況が日々変化するためだ」とし、「25%の関税が10%や5%、2%に変更されたり、まとめて延期されたりすることもあり得る。このため価格設定やリスク管理が一層困難になっている」と指摘した。

 

今回のボラティリティー急上昇は、短期的には取引高を押し上げるが、長期的には市場の流動性を脅かす恐れがある。

JPモルガン・チェースのアナリスト、トレーシー・アレン氏の顧客向けリポートによると、原油と燃料市場は投資家の資金引き揚げで11日までの1週間に純流出が20億ドル(約2800億円)に達した。

先物市場の取引高は3月終盤の水準に落ち込み、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の未決済建玉も、最初こそ急増したものの減少。投資家はトランプ氏の次の関税措置を予測するという運試しより撤退を選んだ。

マレックスのシニア商品ストラテジスト、ライアン・フィッツモーリス氏は「こうしたニュース主導のボラティリティーは流動性にとって好ましくないことが多い。ビッドとオファーの差が広がるとともに、市場参加者の撤退で売買高が減る」と指摘する。

その上で「これはボラティリティー拡大で悪循環を引き起こすことが多々ある。相場動向に応じてポジション規模を調整するシステマチックファンドはレバレッジ解消を余儀なくされる」との分析を示した。

原題:Oil Traders Lurch From Praying for Volatility to Drowning in It(抜粋)

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