(ブルームバーグ):会社に行く。自分の価値を示す。より多くの仕事をこなす。文句を言わない。自分の職を守るために何でもする。
関税による景気後退への懸念、採用凍結、解雇の増加といった不安が渦巻く現在の労働市場について、筆者が今週、複数の金融・キャリア専門家と話して得たアドバイスは、まさにこれだった。
米求人サイト「インディード」のキャリア専門家、プリヤ・ラソッド氏は「どんな職も『安全』だという保証はないが、自分が職場にもたらしている価値を強調する方法はある」という。
では、具体的にどうすればよいのか。また、景気後退に備えて仕事やお金の面で今すべきことは何か。その答えを以下にまとめた。
意外な助言
ボストンの資産運用アドバイザー、グリーン・ビー・アドバイザリーのキャサリン・バレガ氏からは、非常に印象的な答えが返ってきた。
万が一に備える予備資金や失業保険についてのアドバイスがあると思っていたのだが、最初に返ってきた答えは次のようなものだった。
「仕事を辞めないこと。たとえやりがいを感じていなくても、今は転職すべき時ではない」という。
その理由は、経営者が景気減速に対処するために人員削減を迫られた場合、入社してからの期間が短い人ほど解雇のリスクが高いからだという。
しかし、解雇されるリスクは誰にでもある。心配な人は予備資金をためるためることを勧めるとバレガ氏は言う。
同氏はこの点に関してはかなり慎重で、一部の人には「最大3年分の給与相当額」を貯蓄しておくよう助言する。
そうすれば、解雇された場合も再教育や起業などにじっくりと取り組める。現在の高金利貯蓄口座なら現金同等資産でもそこそこの利回りが期待できる。
自分の価値を示す3つの方法
職を守る最善の方法は「自分の価値を明確に示すこと」だ。筆者が話を聞いたすべてのキャリア専門家が口をそろえてこう答えた。
ニューヨークのエグゼクティブコーチング会社「M2リーダーズ」のマイケル・ウルトゥスアステギ・メルチャー氏は、「パフォーマンスが高く、手がかからない人材であることを示すことだ」と、それ以外にはないというかのように言い切った。
インディードのラソッド氏は、価値を示すための3つの具体的な行動を挙げる。
(1) コスト削減の提案をする
多くの企業がコスト圧力に直面している現在、経費節減のアイデアは歓迎される。外注業務の内製化や、より安価な業者の調達、必要性の低い支出の見直しなどがその例だ。
(2) 新たな収益源を提案する
不確実な環境の中でも成長の可能性を見いだす力があることを示せれば、社内での評価は高まる。
(3) 追加業務を引き受ける
多くの企業が採用を凍結している現状では、空席となった職務を補うことが昇進やスキルのアピールにつながる。
ネットワーキングの口実に「関税」
関税が労働市場にどう影響するかは依然として不透明だ。しかし、この曖昧さこそが「ネットワーキング」の絶好の話題になると、M2リーダーズのメルチャー氏は語る。
「『関税の影響って業界的にどうなりそう?』のような話題は自然に人に連絡するきっかけになる」という。
知人との関係を「温めておく」ことが今は重要だ。必要なときだけ連絡してくると思われないようにするためにも、こうした時事ネタは有効だ。
企業が今、求める人材とは?
職を維持するには、自分の希望だけでなく「会社が何を求めているか」を知ることも重要だ。そう語るのは、ニューヨークの人材派遣会社「ABSスタッフィング・ソリューションズ」のアリエル・シャー氏。
「企業が求めるのは、実践的なスキルを持ち、常に前向きにスキルアップを目指す姿勢のある人材だ。不確実な時代にあっても柔軟に対応できる力を示すことが重要だ」と同氏は解説した。
原題:How to Stay Ahead at Work as Tariffs Rattle Job Market: Wealth(抜粋)
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