パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)はトランプ米政権が保護主義を推進しているため、米国の金融資産は「英国や新興市場と同じような動き」になるリスクがあると指摘した。

ピムコのマーク・サイドナー、プラモル・ダワン両氏は17日のリポートで「米政策の急速な転換は、米国市場と資産を基盤とするグローバル金融システムに慣れた投資家にとって問題になっている」と分析した。

関税措置の相次ぐ発表で、米国債の利回り曲線はスティープ化しており、長期債利回りが急上昇する中で、ドルと米金融株も軟化している。この組み合わせは、ドル建て資産を保有する上でのリスクプレミアム上昇を示している。

両氏は米国への投資見通しについて、「保護主義への政策転換が世界中の投資家にとって長年の想定を再考する機会になっている」と指摘。最近のドル・株・国債の同時安は新興市場国と関連付けられることが多い組み合わせだとの見方を示した。

ピムコは米国の関税政策を「自滅的な供給サイドのショック」と表現し、「英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に類似した現象だ」と指摘。「スタグフレーション的な見通し」につながると予想した。連邦準備制度理事会(FRB)は「インフレ期待の再燃と米経済成長鈍化見通しの間で、バランスを取る金利政策を策定する必要に迫られる」と分析した。

明るい材料としては、不利な市場環境が政策転換を促す可能性だ。最近の関税実施の延期と貿易交渉の模索は、今週の米市場を落ち着かせる要因となった。

ピムコは「現時点では、これは米国が自ら招いた傷だ」と指摘。「米貿易政策が混乱を招かず、予測可能な方向に転換すれば、センチメントと相場は急速に反転する可能性がある」と予想した。

ピムコはまた、市場では過去の激しい変動と資産価格の急落時に導入されたような規模の公的支援は期待できなさそうだとも警告した。

「経済や相場の下降期に政府が積極的に介入すると、市場は当然のように考えている」と指摘。「財政支援は選択の余地がないためではなく、債務を拡大できる余地が限られているため、可能性は低い。地政学情勢の緊張が続くこの時代は、過去の危機時よりもグローバルな政策協調が格段に少なくなることを意味する」と論じた。

この見通しに基づく主な投資戦略は以下の通り。

  • ドルをアンダーウエート。米国の「純国際投資ポジションは世界最大のマイナスで、これはグローバル資本で賄われている。この再均衡が進むにつれ、ドルは弱含む可能性がある」
  • グローバルなデュレーションのオーバーウエート。欧州や新興国、日本、英国などの金利エクスポージャーが魅力的
  • 利回り曲線のスティープ化から恩恵を受ける取引を選好。米国が「ナショナリズムを重視する方針にシフトすることで、財政リスクプレミアムが拡大する可能性がある」

原題:Pimco Warns US Markets Mirroring UK and EM After Tariff Shock(抜粋)

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