日本銀行の植田和男総裁は17日、米国の関税政策に伴う先行き不確実性の高まりを踏まえ、予断を持たずに政策判断を行うとの見解を示した。参院財政金融委員会で語った。

植田総裁は、「米国情勢は気にしている」とした上で、「特に関税政策を巡る不確実性が急速に高まっている」と指摘。不確実性の高まりを十分に念頭に置き、米関税措置が日本経済に与える影響を「今後の決定会合で予断を持たずに点検し、適切に政策判断をしたい」と述べた。

トランプ米政権の関税政策を受けた先行き不確実性の高まりや金融市場の混乱により、堅調な賃金・物価を背景に高まっていた日銀の早期利上げ観測も急速に後退している。4月30日-5月1日の金融政策決定会合を前に控え、米国の通商政策の余波が景気の下振れリスクにつながる警戒感を明確にした。

植田総裁は、昨年3月以降の利上げは経済・物価情勢の改善に対応した緩和度合いの調整だとし、基調的な物価上昇率が上昇しているにもかかわらず、低金利を継続すれば後に急速な利上げを迫られるリスクがあると説明。次回会合では、新たに公表する展望リポートに示された姿に基づいて政策を判断していくことになると語った。

植田総裁は14日に行われた産経新聞の単独インタビューでも、米関税政策は「2月以降は悪いシナリオの方に来ている」と指摘。国内経済への下押し圧力となった場合は「情勢の変化に応じて適切に判断する」と発言していた。

一方で、これまでは経済・物価はおおむね日銀の見通しに沿って推移していると説明。実質金利が極めて低い水準にある中で、景気の改善が続いて経済・物価見通しが実現していけば、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」との考えも改めて示した。

見通し実現の確度

中川順子審議委員も同日、群馬県金融経済懇談会で講演し、経済・物価見通しのリスクの筆頭に米関税政策や海外経済、金融市場の動向を巡る不確実性の高まりを挙げ、先行き不透明感が「一層高まっている状況」と指摘。不確実性の高まりが、企業・家計のコンフィデンス(信頼感)に影響し、日本の実体経済や物価に影響を及ぼす可能性に言及した。

その上で金融政策運営は、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向を予断を持たず丁寧に確認 し、「適切に政策を判断していく」と指摘。現在の低い実質金利を踏まえ、総裁と同様に、経済・物価見通しが実現していけば、政策金利を引き上げて緩和度合いを調整していくことになると語った。

午後の会見で中川氏は、米関税政策の影響で先行き不透明感が強まる中では、現状で見通しが実現する確度を判断するのは難しいと指摘。次回会合に向け、それまでに収集した情報などを踏まえて「その時点での経済・物価情勢、金融市場の動向を丁寧に確認し、適切に判断したい」と語った。

(中川日銀審議委員の会見の内容を追加しました)

--取材協力:横山恵利香.

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