楽天証券などで顧客のIDやパスワードが盗まれ、不正取引が相次いでいる問題で、日本証券業協会の森田敏夫会長は16日の会見で、同協会が定めるインターネット取引での不正防止に関するガイドラインを改定する方針を正式に表明した。

森田会長によると「インターネット取引における検討ワーキンググループ」で不正取引対策に関するガイドラインの改定に向けた議論を開始した。会員各社に対して、多要素認証と呼ばれる2つ以上の要素を必要とする本人確認の認証方法を基本的に義務化する方向で議論を進める意向だという。

森田会長は「多要素認証を基本的に義務化の方向でもっていくことが重要ではないかと思っている。そういう観点から話を進めてほしいということでお願いしている」と述べた。ブルームバーグは日証協が指針改定を検討している事実を先に報じていた。

金融庁は証券各社に対して不正取引問題の早期の全容把握やセキュリティー対策の強化を求めた上で、被害に遭った顧客には真摯(しんし)に対応するよう呼びかけていた。これに応えるよう、同協会が本格的に動き出した格好だ。

森田会長は、被害に遭った顧客への補償に関しては「基本的には各社が判断する」としながらも、「一律に補償しないということはあり得ない。お客さまの状況に合わせて丁寧に対応を考えてもらわなければならない」と述べた。被害総額については、各社から聞き取りを実施しているものの、現時点では正確に提示できるほどの把握はできていないとした。

不正取引を巡っては、3月下旬に楽天証で発覚して以降、SBI証券やマネックス証券のほか、野村証券やSMBC日興証券、松井証券でも発生したことが明らかになっている。

楽天証では、不正取引が行われた可能性の高い銘柄について買い注文を一時停止している。広報担当者によると対象は中国株1092銘柄に加え、4月14日からは米国株20銘柄についても停止した。野村証券も日本株の一部銘柄でネット経由の買い注文を8日から13日まで停止していた。被害者に加え、一般の個人投資家にも影響は及んでいる。

(最終段落に情報を一部追加して記事を更新します)

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