10年後の「トキ消費」、VR・ARとの融合とグローバル化

さて、最後に、「トキ消費」の10年後について考えてみたいと思います。

その頃には、さらに新しい消費スタイルが登場し、「〇〇消費」といったキーワードも増えているでしょうが、「トキ消費」に加わるであろう要素が2つほど挙げられます。

1つ目は仮想現実(VR)や拡張現実(AR)との融合です。現在、これらの技術を取り入れた「トキ消費」が全く存在しないわけではありませんが、現時点では「トキ消費」に該当するイベントは基本的にリアルの場で行われることが多いでしょう。

今後、さらに技術が発展することで、VRやARを活用したイベントが普及し、仮想空間での共有体験が一般化する可能性があります。

2つ目はグローバル化です。VRなどの仮想空間でのイベントが一般化すると、物理的な空間を超えた集まりが日常的になるため、共通の趣味や関心ごとを持つ世界中の人々が同じイベントに参加しやすくなります。

同時通訳技術などがさらに高度化することで、地理的な障壁に加えて、言語の壁も低くなり、異文化交流や国際的なコラボレーションが一層促進されると予測されます。

これからの消費トレンドを牽引するのは?

技術進化が消費スタイルに大きな影響を与える中で、今後も消費のトレンドを生み出すのは若者だと考えるべきでしょうか。いえ、必ずしもそうとは言えないでしょう。

これまで日本では、消費のトレンドは主に若者が牽引してきましたが、今後は一層、高齢化が進む中で、高齢者の存在感が消費市場で増していきます。

10年後、バブル世代など、消費意欲や好奇心が旺盛な世代が高齢者となる中で、高齢者発の新しい消費スタイルも登場することが予想されます。

そうなれば、これまで所有を謳歌してきた世代が、今までとは異なる形で所有に価値を見出す、新しい「モノ消費」の形が生まれるかもしれません。

例えば、Z世代の特徴とされる消費スタイルの一つには、お金を使うかどうかを社会貢献性で判断する「イミ消費」があります。

社会貢献意識が相対的に薄く育った世代においては、Z世代のように社会貢献意識を行動原理にする姿勢を眩しく感じることがあるかもしれません。

その影響を受けて、シニアが社会貢献を念頭にお金を使う「シニア・イミ消費」も登場する可能性があります。

もし、所得が比較的高いシニア世代が社会貢献を意識してお金を使うようになれば、その社会的インパクトは非常に大きなものとなるでしょう。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 久我尚子 上席研究員)