(ブルームバーグ):トランプ米大統領が政府機関閉鎖中の10日に打ち出した恒久的な人員削減の命令は、民主党の根深い不信感を一層強める結果となり、すでに米国史上4番目の長さとなっている今回の政府機関閉鎖が長期化するリスクをさらに高めている。
民主党の重鎮マリー上院議員は、行政管理予算局(OMB)のボート局長が発表した今回の解雇について、違法だと非難。1月にトランプ氏が政権復帰して以来、予算法を無視してきた政権にとっては「何ら目新しいことではない」と批判した。
マリー議員は10日、「こんな不正直な者たちに脅されるべきではない」と語気を強め、「政府機関を再開させるには妥協が必要。それはすべての米国人が理解している単純な概念であり、どれだけ脅してもそれを変えることはできない」と断じた。
今回の政府機関閉鎖は、党派間の協調がすっかり失われた現在の連邦議会の雰囲気を最も端的に表している。1月にトランプ氏が政権に復帰して以来、大統領令を通じて大量解雇の命令や数十億ドル規模の歳出削減などを強行し、民主党とその優先課題を踏みにじってきた。
議会共和党も民主党をほとんど無視しており、超党派協議を経ずに一方的な歳出・減税法案を可決。政府予算の協議に関しても、期限の前日になるまで民主党指導部との協議に応じてこなかった。

民主党は今回の予算協議を、政権奪還に向けた初の本格的な交渉の場と捉えており、来年の中間選挙に向けて有権者の関心が高い家計直結の課題、すなわち医療費の抑制を最優先事項に据えている。
今年すでに、トランプ氏とボート局長は数百億ドル規模の民主党優先支出を削減しており、3月の政府閉鎖回避の際にシューマー院内総務を含む民主党上院議員が協力票を投じたにもかかわらず、その結果がこれだと不満を強めている。
フィリバスター
上院民主党は、政府再開を妨げているフィリバスター(議事妨害)について、将来的な協議の約束だけで解除するつもりはないと断言。医療保険制度改革に関する具体的な交渉、特に来年1月で期限切れとなる医療保険補助金の延長を、前提条件として求めている。
すでに上院では、民主党によるフィリバスターを打破しようとする試みが7回失敗に終わっており、次の採決は14日に予定されている。
一方、ジョンソン下院議長が下院を無期限休会にした判断は、民主党の反発をさらに強めた。これは民主党に譲歩を迫る圧力とみられているが、その間にも連邦職員は給与を受け取れず、軍人も15日の支給日に間に合わない恐れが出ている。
トランプ氏は11日、政府閉鎖中であっても15日に軍人への給与を支給するための予算を確保したと表明したが、すべての軍人に対して十分な資金があるのか、あるいは法的権限があるのかは明らかになっていない。

ジョンソン下院議長やスーン上院院内総務ら共和党指導部は、低所得の女性や子どもを支援するプログラムの資金が底を尽きかけており、重要な政府機能が危機にひんしていると警告。こうした事態の責任は、民主党の議事妨害にあると主張している。
民主党は、数百万人の医療保険を守るよりも政府閉鎖を続けることを優先しているのは共和党とトランプ氏の方だと反論している。
実際、医療保険補助金の受給者の多くはトランプ氏が勝利した州に住んでおり、数百万人が保険料急増の通知を受け取っている。月額で数千ドル増加するケースもあるという。
さらに、トランプ氏とボート局長は、議会の承認を得ずに大規模な歳出削減を行えると主張しており、現行法と矛盾するその姿勢が、民主党の不信感を一層強めている。
過去の政府閉鎖の例を見れば、最終的に民主党が折れる可能性は高い。それでも今回は、民主党が医療政策を前面に押し出し、来年の中間選挙での争点に据える構えを見せており、さらに共和党内の足並みの乱れも浮き彫りになっている。特にグリーン下院議員が党指導部と一線を画し、医療制度改革を求めたことは象徴的だ。
一方で、グリーン氏を含む一部の共和党議員は、議事妨害を終わらせる60票ルールの撤廃、いわゆる「核オプション」の検討に言及し始めている。このルールを撤廃すれば、民主党の協力なしに政府再開が可能となる。
共和党は数週間前、トランプ氏の指名人事を迅速に承認するため、すでに一部の手続きを変更したばかりだが、立法手続きでフィリバスターを撤廃すれば、米国の政治制度の根底を揺るがす可能性がある。共和党内でも、こうした動きが将来的に自らに跳ね返ってくることを懸念する声は多い。
ジョンソン下院議長も9日、フィリバスター撤廃について、いずれ社会主義者に権限を与える結果になりかねないと懸念を表明した。ただ、この案について話し合いが行われていることを認め、「この政府閉鎖問題はもはや手に負えなくなっている」と述べた。
原題:Trump Layoffs, Broken Trust Harden Democrats’ Shutdown Stand (1)(抜粋)
--取材協力:Maria Paula Mijares Torres.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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