米国では新車は既に高根の花になっているが、今後は手の届く価格の車を見つけるのがさらに難しくなりそうだ。

トランプ大統領が来週発動すると表明した自動車関税は業界全体のコストを押し上げ、店頭小売価格は数千ドル上昇する見通しだ。ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーター、起亜自動車、現代自動車などの低価格モデルの多くは米国外で生産されているため、特に低価格帯の市場で顕著な影響が予想される。

ロサンゼルスのGM「シボレー」販売店

一方、ホンダとトヨタ自動車の低価格モデルは消費者にとって掘り出し物となる可能性がある。約2万8000ドル(約420万円)のホンダ「シビック・ハッチバック」はインディアナ州で、エントリーレベル価格が約2万3000ドルのトヨタのコンパクトカー「カローラ」はミシシッピ州でそれぞれ生産されている。

調査会社コックス・オートモーティブのエグゼクティブアナリスト、エリン・キーティング氏は「購入者にとっては本当に難しい状況になるだろう。われわれが予想できるのは価格が上昇し、販売奨励策がなくなるということだけだ。一部の車種は姿を消すかもしれない」と語った。

新車は住宅とともにアメリカンドリームの対象の一つだが、米国の新車平均価格は5万ドルに迫っており、ますます手に届きにくくなっている。物価高で逼迫(ひっぱく)している家計に高金利が追い打ちをかけている。

コックスによると、市場に出ている3万ドル未満の20モデルのうち少なくとも半分が自動車関税で大きな打撃を受ける見込み。同社は直近の調査リポートで、カナダないしメキシコで組み立てられた車は平均で5855ドルのコスト増になると推定し、「その影響により手頃な価格の車の多くは米市場にとどまることができなくなる可能性が高い」と分析した。

 

トランプ氏は、関税によって自動車価格が上昇する可能性を認めているが、短期的に打撃を受けるとしても国内製造業が長期にわたって受ける恩恵によって相殺されると主張している。

JPモルガン・チェースのアナリスト、ライアン・ブリンクマン氏は調査リポートで、関税が消費者に全て転嫁された場合、米国の自動車価格は平均で11.4%上昇する可能性があると分析した。

米国では価格高騰により、新車を長年購入してきた人が中古車市場に流れており、さらなる値上げはこうした動きを加速させる可能性がある。

しかし、コックスのキーティング氏は中古車市場にも問題があると指摘。新型コロナウイルス禍で自動車生産が打撃を受けた結果、人気の高い1-3年落ちの中古車在庫が減少し、4-6年落ちのモデルの価格に上昇圧力がかかっていると説明した。

原題:Cars Under $30,000 Risk Becoming a Casualty of Trump’s Tariffs(抜粋)

--取材協力:Christopher Cannon、Amy Stillman、Gabrielle Coppola.

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