米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、言及した企業の株価を押し上げる「キングメーカー」の地位を失いつつある。

人工知能(AI)を巡る熱狂が最高潮に達していた1年前には、フアン氏が同社の年次開発者会議「GTC」の基調講演で顧客やパートナーの名前に触れると、デル・テクノロジーズやシノプシスなど多くの銘柄が上昇していた。一方、18日に行われた今年の基調講演でも同様の言及があったものの、反応は薄かった。

その格好の例が米自動車メーカーのゼネラル・モーター(GM)だ。エヌビディアがGMの自動運転車開発を支援するとフアン氏が発言した数分後、GM株は市場全体の下落の流れに飲み込まれ、取引時間中の安値を付けた。GM株は一時1.7%安まで下げた後、0.7%安で引けた。

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが18日、年次開発者会議「GTC」で基調講演

これは、トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争によって景気見通しが悪化し、株価が下落する中、いかに市場のムードが変化しているかを示している。また、AIへの巨額投資がいつ革命的な変化をもたらすか疑念が広がっていることも、ハイテク株の押し下げ要因となっている。

エヌビディア株自体も、売上高の伸びを巡る懸念から今年に入り下落している。18日には3.4%下げ、1月のピークからの下落率は20%を超えた。時価総額は8000億ドル(約120兆円)余り減少した。

ザックス・インベストメント・マネジメントの顧客ポートフォリオマネジャー、ブライアン・マルベリー氏はエヌビディアについて、「かつての輝きを失っている」と指摘。フアン氏の講演後、同社株を「もっと買いたいと思わせるような極めて画期的な内容はなかった」と述べた。

またフアン氏が同日発表したTモバイルUSやシスコシステムズとの無線通信プロジェクトについても、投資家の反応は鈍かった。エヌビディアは次世代通信規格6G向けの「AIネーティブ」な無線ネットワーク・ハードウエアを作り出す支援を行うと同氏は述べた。Tモバイル株は0.2%上昇した一方で、シスコシステムズは1%下落した。

原題:Nvidia CEO Loses Stock Kingmaker Status as Touts Fall Flat(抜粋)

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