(ブルームバーグ):ハリス前米副大統領は、当時のバイデン大統領が再選を目指すかどうかの判断を民主党幹部らが本人に委ねたことについて、「軽率」だったと批判した。2024年大統領選で敗北した後にハリス氏が語った内容としては、最も率直で厳しい発言となった。
ハリス氏は10日に米誌アトランティックに掲載された回顧録の抜粋で、バイデン氏は大統領職を務める能力はあったものの、時に疲れを見せていたとし、側近たちは2期目出馬の是非という核心的な問いに対して、完全に判断を委ねていたと指摘した。
バイデン前大統領とジル・バイデン夫人に言及し、「『それはジョーとジルの判断だ』と、まるで呪文のように私たちは皆、そう言い続けた。催眠術にでもかかったかのようだった。それは寛容だったのか、それとも軽率だったのか。振り返れば、それは軽率だったと思う。リスクがあまりに大き過ぎた」と述懐。「一人の人間の自尊心や野心に委ねるべき選択ではなかった。個人的な判断よりも重くあるべきだった」とも記している。
バイデン氏が出馬を断念し、後継候補としてハリス氏を支持した後、同氏が大統領選に向けて展開した慌ただしい選挙戦を描いた回顧録「107日間(107 Days)」の抜粋は、これまでのトーンからの転換点となっている。短期間に終わった自身の候補期間中、ハリス氏はバイデン氏の撤退時期に対する批判を避けてきたが、今回はそれに踏み込んだ内容となっている。
バイデン氏は結局、再選を断念したものの、最終的に勝者となるドナルド・トランプ氏との討論会で惨憺(さんたん)たるパフォーマンスを見せ、有権者の間で認知能力や健康状態への懸念が一気に高まった後のことだった。この決定を巡って民主党内では批判の応酬が起き、ハリス氏の敗北を受けてさらに激しさを増した。
ハリス氏は前大統領を取り巻く狭いグループに失望を示しつつも、擁護の言葉も記している。どんなに状態が悪い日であっても、バイデン氏は「トランプ氏の最も良い日よりもはるかに知識が深く、判断力に優れ、思いやりがあった」と述べた。
さらに、バイデン氏が職務を果たせない状態にあったなら、自ら声を上げていたはずだとし、トランプ氏との討論会での不調についても、過酷な外遊日程が続いた直後だったことを踏まえれば驚くことではなかったと説明した。
ハリス氏は「ジョー・バイデン氏は、豊富な経験と強い信念を持つ賢明な人物であり、大統領の職務を遂行する能力があった。だが81歳になったジョーは疲れるようになった。そうしたときに、年齢が身体的な動きや言葉の乱れとなって表れた」とも指摘した。
保守系メディアの攻撃にさらされた際には、バイデン陣営から脇に追いやられた、あるいは見捨てられたと感じたと、不満も表明している。
「私の仕事ぶりについて前向きな評価を受けたり、虚偽の攻撃に対して擁護されたりすることは、ほとんど不可能だった」と記述。「世論調査で私の支持率が上がっていると示された時、バイデン氏の取り巻きは浮かび上がってくる対比を好まなかった」と書いている。
バイデン氏本人に対しては、再出馬を断念した際の演説で、開始から9分間、ハリス氏の名前には一切触れなかった」とし、「それが全てだった」と記している。
ハリス氏は今年、2026年のカリフォルニア州知事選に出馬しない意向を表明している。同氏の政治的将来を巡っては依然として注目が集まっており、2028年の大統領選で民主党の指名を目指すかどうかが焦点となっている。
原題:Harris Says It Was Reckless to Defer to Biden on Running Again(抜粋)
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