日本にとって最大の関心は、自動車関税
日本にとって、「天王山」とも言える戦いが、自動車への追加関税が避けられるかどうかです。自動車の対米輸出は130万台に及び、対米輸出額のおよそ3割を占めています。関連産業も含めると国内で550万人の雇用を支える、文字通り日本の基幹産業です。
鉄鋼・アルミへの追加関税に対し、日本が「遺憾の意」を表明するにとどめているのも、武藤経済産業大臣が無駄足を承知で訪米し、日米協議のスタート台を作ろうとしたのも、何としても自動車への追加関税を避けたいから、と言えるでしょう。
しかし、トランプ大統領は12日、日本からの自動車輸入について「あまりに大きすぎる。なのに日本はアメリカの自動車を受け入れない」と発言しました。2月初めの石破・トランプ首脳会談の“成功”など、どこ吹く風です。
まさか「コメの敵を自動車で」?
日本の自動車関税はゼロ。これに対してアメリカは、、乗用車が2.5%、トラックが25%です。「相互的」と言うのなら、日本が自動車で追加関税をかけられるのは、全くの筋違いです。それでも非関税障壁や、他の品目まで持ち出して関税戦争を仕掛けてくるのがトランプ流なのでしょう。
ホワイトハウスのレビット報道官は、11日の記者会見で、世界の高関税品目の図表を示し、「日本のコメの関税は700%もある」とアピールしました。この図表には8品目が書かれており、日本からはコメと牛肉と乳製品の3つ、カナダとインドからそれぞれ2つ、そしてEUが1つとなっていました。
実は日本のコメ関税700%というのは事実ではありません。日本は、国家貿易品目として関税ゼロで輸入するミニマムアクセスを受け入れる代わりに、それ以上の輸入について、1キロ341円の関税を課しています。かつてのコメの国際価格や為替レートでは700%台に相当した時代もありますが、現在は、率にすると200%台だということです。
いずれにせよ、この報道官のアピールからは、日本が「相互関税」のターゲットにされていることがうかがえます。「コメの敵を自動車で」ということにもなりかねません。
重要製品、戦略製品を取り戻す意志
なにより、重要製品や戦略製品の生産をアメリカに取り戻す、というトランプ氏の思いは、今のところ、かなりの本気に見えます。その考えは、2期目の政権を自分に忠誠を尽くす人々で固めたことで、より純化した形で現れているのではないでしょうか。
今後、アメリカ国内の世論も睨みながら、トランプ関税の影響をどう最小化していくのか、日本の通商外交は正念場を迎えます。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)