11日の日本市場では株式が大幅安となり、日経平均株価は一時1000円超下げた。トランプ米大統領の関税政策で米国の景気懸念が強まったことや、円高を受けて輸出関連を中心に売りが膨らんでいる。為替は円が対ドルで上昇し、債券は大幅高。

トランプ氏はFOXニュースのインタビューで、米国が景気後退に陥る可能性を問われ、「過渡期にある」と述べた。市場では目先の株価を顧みなくなったと受け止められ、10日の米国株は急落した。

11日に発表された日本の昨年10-12月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、個人消費や民間在庫変動の下振れが響き、前期比年率2.2%増と、速報値から下方修正された。市場予想(2.8%増)も下回った。

T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、株価のボラティリティーが高く、しばらくリスクオフ環境は続きそうだと指摘。日本の材料では「GDPの下方修正や1月家計支出の下振れなどが意識され、円債に買いが入っている」と話した。

株式

株式は日経平均の下げ幅が一時1000円を超えた。米国でトランプ政権による関税政策や連邦政府職員の大量解雇が景気を悪化させるとの懸念が強まったほか、為替の円高推移が嫌気され、投資家はリスク回避姿勢となっている。

電機や精密機器、自動車など輸出関連、非鉄金属といった海外景気敏感業種が売られ、国内外金利の低下を材料に銀行や保険、証券など金融株も安い。

みずほ証券エクイティ調査部の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、「米国株は株価収益率(PER)の割高感がある中、景気悪化懸念が出てきた」と指摘。「多くの投資家が保有し、これまでの相場上昇を主導してきた大型テクノロジー株の下げが特にきつい」と話した。

為替

円相場は上昇。リスク回避による安全資産需要からほぼ全面高となっている。

円は対ドルで146円54銭まで上昇し、昨年10月以来の高値を更新した。あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは「GDPの下方修正より、株価の大幅下落の方が材料視されている」と語る。米長期金利が時間外取引で低下していることもドル売り・円買い要因だと言う。

ただ、円は147円台前半まで上げ幅を縮小する場面もある。大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、米国株の先物が戻していることで日本株も下落幅を縮小しており、リスク志向のドル買い・円売りが出ていると指摘した。投機筋の円買いポジションがあまりにも積み上がっているため、短期的には円売り圧力の方が強いとみる。

債券

債券は大幅上昇。景気悪化への懸念で米国の長期金利が急低下した流れを引き継ぎ、買いが優勢だ。GDP改定値が下方修正されたことも相場の支えとなっている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは、「きょうは日本銀行の買い入れオペも実施され、5年から10年債を中心に堅調な相場展開が続く」との見方を示した。

GDPについて藤原氏は、個人消費が弱く「景気が良くなさそうなことが示されたのは債券相場のサポート」とした一方、下方修正は在庫の下振れの影響が大きいとして「金利を押し下げるほどの材料にはなりにくい」と述べた。

日銀は11日、定例の国債買い入れオペを実施した。対象は残存期間1年超3年以下、5年超10年以下、25年超で、買い入れ額はいずれも前回から据え置いた。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:日高正裕、長谷川敏郎.

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