米国の大学では新入生たちが学生生活になじんできたところだが、多くの学生が気にかけているのは授業や寮での暮らしばかりではない。

人工知能(AI)が新卒者向け初級レベルの仕事内容を様変わりさせるとの不安に突き動かされ、厳しい就職戦線で一歩先んじようと、新入生が早くもインターンシップ先を確保しようと動き始めている。中には、親が用意した就活支援コーチと早くから準備に励む学生もいる。

かつて就活は大学3年生が終わった後に始めるのが一般的だったが、時期はどんどん早まっている。学生向けのキャリア支援サイト、ハンドシェークの新たなデータによると、2028年卒業見込みの約15%が1年生の半分が終える時点までに少なくとも1社のインターンシップに応募していた。24年卒業の学生はこの割合が3%にも達していなかった。

 

「最近は、大学1年から始めて複数年にわたる就活支援コースの依頼が増えている」と、学生やその家族とともに初期キャリアのプランニングを支援するレスリー・ミトラー氏は述べた。

社会人としての初期段階を指す初期キャリアのアドバイザー、ジル・ティポグラフ氏も同じ状況を目にしている。「まさに大学に入りたての子供を持つ親から、連絡を受けたばかりだ。いろいろ話し合って、レッスンを始めることになった」と語り、「これが新常態として広がりつつある」と指摘した。

戦略的なインターンシップ探し

一部の学生は、上級生が就活に苦戦する様子を目の当たりにして、早めに準備する必要を感じたと話す。

「素晴らしい経験やスキルを持つ上級生ですら、卒業後の就職口をまだ見つけられていない。そのような状況を見て、少し怖くなった」と、サンタクララ大学で2年生になったばかりのナイラ・アーサンさんは話した。ナイラさんは今年の夏、小規模なベンチャーキャピタル企業でインターンとして働いたが、上級生の状況が「当然、自分の考えに影響した。後のリスクを減らすためにも、できるだけ早い段階から積極的になる必要があると思った」という。

ナイラさんは1年生でインターン先を見つける上で、なるべく間口を広げることを心がけた。大企業にも応募したが、中小にもチャンスはないか調査し、自分の履歴書に大企業の名前を加えることよりも、できる限り現場で経験を積めることを優先したと語った。

また、ブラジル出身でノートルダム大学2年生のエドゥアルド・アマラル・ヴィアナさんは、1年生終了後にAI新興企業と学術研究の2つのインターンに参加した。3年生の夏によりよいインターン先を確保するために、早い段階で経験を得たかったからだ。特に留学生にとって「インターンの競争はますます激しくなっている」と述べた。

エドゥアルドさんにとっては、別の動機もあった。学生生活の後半になって当初の予定とは別の道に進みたくなったことが原因で、就職活動に苦戦した友人もいるため、自分の進路を確認したかったことも理由だとエドゥアルドさんは話した。

親も支援

忙しいスケジュールの合間を縫って初期キャリアのレッスンを受ける子供を支援する親もいる。費用は時間や提供するサービス内容にも左右され、一般的に350ドルから5000ドル(約5万1000円から73万円)を超える場合もある。インターンシップ探しや履歴書の作成、模擬面接、インターン採用担当者に対するメールの添削などがレッスンに含まれる。

カリフォルニア州ベイエリアのクリシュ・サストリー氏は、息子の就活準備支援にミトラー氏の同僚の一人を雇った。「2年生でインターンを確保するのは実に難しいが、それをやってのけた」と喜んだ。AIが初期キャリアの求人を減らしかねないとの懸念がある中で、初期キャリア向けレッスンは息子が競争力を得る手段になっているとの見方を示した。

AIに対する懸念は根拠のないものではない。ハンドシェークに掲載された求人件数は8月時点で前年比16%余り減り、1件あたりの平均応募数は26%増加した。同サイトによれば、26年卒業予定の学生の60%超がキャリア見通しに悲観的で、そのうちほぼ半数が生成AIを不安の要因に挙げた。

AIはすでに一部の分野で初級職のあり方を変え、定型業務を減らす一方で、判断力やコミュニケーション能力、デジタルスキルが新入社員には強く求められるようになっている。スタンフォード大学の研究者による最近の調査では、ソフトウエア開発やカスタマーサービスなどAI利用が盛んな職種では、キャリアを始めたばかりの若年層の雇用が13%減少していたのに対し、同じ職種で経験豊かな中堅以上の雇用は横ばいか増加していた。

収入をアルバイトに頼る多くの学生にとって、インターン重視の流れは難しい選択を迫ることになる。ハンドシェ-クの最高インパクト責任者モンネ・ウィリアムズ氏は、キャリアを考えて夏にインターンを選べば、確かな収入源をあきらめることになる場合が多いと指摘した。

早期のインターンは、企業環境への準備が不十分なままそのプレッシャーにさらされる不安もある。初級職向けキャリアコーチのジュリア・ヒックスデペイスター氏は、非常に優秀な学生であっても「精神的にはまだ若いことがある」と話した。

原題:College Students Seek Internships Earlier as Job Fears Mount(抜粋)

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