(ブルームバーグ):17日の米金融市場では、米国債が下落(利回りは上昇)。S&P500種株価指数は小幅ながら続落した。連邦公開市場委員会(FOMC)は広く予想されていた利下げを実施し、年内2回の追加利下げを示唆したが、市場はこれを既に織り込んでいた。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はFOMC会合後の記者会見で慎重な発言を行い、積極的な利下げサイクルに着手するとの期待が後退した。
FOMCが9カ月ぶりとなる利下げを発表すると、国債相場は一時上昇した。しかし、パウエル氏が金融政策の方向性は依然として流動的だと示唆したことから、失速した。
パウエル氏は、FRBの2大責務の間にあるジレンマを強調した。インフレ圧力が根強く残る一方で、労働市場の指標は軟化しており、今後について「リスクのない道は存在しない」と述べた。
FOMCは主要政策金利の0.25ポイント引き下げを決定。声明では失業率について「やや上昇したものの、低いままだ」と指摘。その上で、「雇用の下振れリスクは高まった」と付け加えた。
TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「パウエル議長が過度にハト派的な姿勢を示すことに慎重で、金利への重しとなっている。特に今回の利下げを『保険的な利下げ』と位置付けている点が影響している」と述べた。
クレジットサイツのマクロ戦略責任者ザカリー・グリフィス氏は「政策声明、経済見通し、ドットプロット(金利予測分布図)は、おおむね市場の予想に沿った内容に見受けられる」と指摘。「声明ではインフレが上昇したことに触れつつも、労働市場の重視が明確だ」と述べた。
アカデミー・セキュリティーズのピーター・チア氏は「誰もが内容を消化しようとしている。アルゴリズム取引の多くが相場を振り回しているが、ハト派的な見方の多くはすでに織り込まれている」と指摘。
「状況が落ち着けば雇用の弱さが改めて認識され、バース・デス・モデルによる過大評価が完全には実体化していないことに人々は気づくだろう。その結果、FRBはドットチャートや会見内容が示唆するよりも速いペースで利下げを進めるはずだ。時間の経過とともに国債は堅調となり、イールドカーブは引き続きフラット化すると予想している」と述べた。
株式
S&P500種はFOMC政策発表後に一時プラス圏に浮上したが、その後はもみ合いとなった末、上げを消した。
Bライリー・ウェルスのアート・ホーガン氏は、「今回の動きはコンセンサスの範囲内であり、弱い内容だった7月雇用統計以来すでに広く予想されていた。市場では短期的に『うわさで買って事実で売る』反応が見られるだろう」と話した。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「FOMCは市場がまさに見込んで政策を発表した。2025年の利下げ3回のうちの1回目で、予想通りの結果だった」と指摘。「市場は典型的な『ニュースで売る』という反応を示すだろうか。季節的に相場が弱含みやすい9月だけに注目される。市場が一服する可能性はあっても、経済がリセッション(景気後退)を回避し、企業業績見通しが引き続き上向けば、強気派は押し目買いに動く公算が大きい」と述べた。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのサイモン・ダンゴール氏は、「ドットプロットの偏りから、FOMCは今回の利下げに加えて、10月と12月にも25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを実施する可能性が高い。インフレの大幅な上振れや労働市場の急回復といった展開にならない限り、FRBが現在の緩和路線を外れる可能性は低い」と述べた。
外為
外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が年初来の安値に下げた後、急速に下げを埋める展開となった。
円は対ドルで一時0.7%高の1ドル=145円49銭まで買われる場面もあったが、その後は下げに転じた。
フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4-4.25%となった。今回の利下げは賛成11、反対1で決定。FOMCは今年に入り5会合連続で政策金利を据え置いてきた。
反対票を投じたのは新しく就任したマイラン理事のみで、より大幅な0.5ポイントの利下げを主張した。
カナダ・ドルは下落。カナダ銀行(中央銀行)はこの日、政策金利を0.25ポイント引き下げ2.5%とした。米関税措置で経済と労働市場が打撃を受ける中、3月以来の利下げとなった。今後の緩和見通しについては何も示さなかった。
原油
ニューヨーク原油先物相場は4営業日ぶりに下落。米国の在庫統計と米利下げの影響を見極める展開だった。
利下げは通常、エネルギー需要を押し上げるが、労働市場が一段と弱まっているという当局の警告が意識された。ドルがやや上昇したことも、ドル建てで取引される商品の魅力減退につながった。
バッファロー・バイユー・コモディティーズのマクロ取引責任者、フランク・モンカム氏は「米利下げに対する相場の反応は、一見するとやや矛盾するように思えるが、ハト派への転換によってFRBがその責務のうち労働市場を守る方に軸足を移したことが鮮明になった」と指摘。「経済の成長リスクが一段と明確かつ懸念材料となりつつあることを認めた格好だ」と述べた。
米エネルギー情報局(EIA)の週間統計によれば、先週の原油在庫は929万バレル減少。ただ、市場の反応は限られた。原油在庫の調整項目が大きかったほか、留出油在庫が1月以来の高水準となったことが弱気心理に拍車を掛けた。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は、輸出ではなく「国内需要が在庫を減らす状況を投資家は望んでいる」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は、前日比47セント(0.7%)安の1バレル=64.05ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.8%下げ、67.95ドルで引けた。
金
金スポット相場は反落。FOMC会合の決定が発表された後、前日終値を挟んで振れが大きくなった。
市場予想通り0.25ポイントの利下げが発表された後、スポット価格は日中取引ベースの最高値である1オンス=3707.57ドルを付ける場面があった。利息が付かない金は通常、低金利下で投資妙味を増す。
ただ、その後は下げに転じた。ニューヨーク時間午後3時20分現在は35.70ドル(1%)安の3654.28ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限はFOMC決定の発表前、7.30ドル(0.2%)安の3717.80ドルで引けた。
原題:Wall Street ‘Sells The News’ After Fed Rate Cut: Markets Wrap(抜粋)
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