インド株は異例の長期下落に見舞われ、株式バリュエーションが下がったにもかかわらず、世界のファンドマネジャーは買い急いでいない。

インド株式市場には、経済成長の鈍化や企業収益見通しの下方修正、米国による関税発動の可能性から生じる問題がなお横たわっている。アジアで安値拾いを狙うトレーダーは、人工知能(AI)の進展に端を発した値上がり局面にあり、なお割安な中国株に引き寄せられている。

消費が伸び悩む中で、インド経済の成長が新型コロナウイルス禍前の比較的緩慢な水準に戻るにつれ、中国からインドに資金がシフトしていた株式ローテーションの反転が浮き彫りとなっている。海外投資家は年初来で150億ドル近くをインド株から引き揚げており、2022年に記録した170億ドルを上回る勢いだ。こうしたこともあり、インド株は1兆3000億ドル(約192兆円)相当の時価総額を失った。

アリアンツ・グローバル・インベスターズのポートフォリオマネジャー、アナンド・グプタ氏は「グローバル投資家は景気持ち直しや企業収益拡大の持続的な証拠を見極める必要がある」と指摘。投資家は都市部や農村部における個人消費の伸びや、企業からの前向きなコメントを期待していると言う。

 

インド株のNSEニフティ50指数の予想株価収益率(PER)は18倍と、昨年9月の21倍から下がっているが、全てのアジア新興国の水準を上回っていることに変わりはない。

最新の政府予測によると、今年度のインド経済の成長率は6.5%と4年ぶりの低水準にとどまる見通し。今後数年の成長率は過去3年の平均である9%近くを大きく下回ると見込むアナリストもいる。

 

一方、こうしたインド株売りの中で価値を見いだす投資家も存在する。

新興国市場のベテラン投資家、マーク・モビアス氏は「底入れの明確な兆候は見られないものの、掘り出し物を探すには絶好のタイミングだ。インド市場は回復するだろう。われわれは今後も機会を模索し、保有していく」と説明した。

ただ、トランプ米政権の相互関税や、インドの対米関税は米国が課す関税よりも高いというトランプ氏の主張などもある。リスクは根強く、外国人投資家は引き続き様子見となる公算も大きい。インド株が米国株と正の相関関係にあることを踏まえれば、米国のリセッション(景気後退)確率が従来よりも高まりつつあることも足かせになる。

PPFASアセット・マネジメントのラジーブ・タカル最高投資責任者(CIO)は、「魅力的なエントリーポイントに到達しつつあるが、垂直型の回復となる理由は見当たらない」とし、「より緩やかで業績主導の持ち直しになるだろう」と予想した。

 

原題:India Struggles to Shake Off Pessimism After $1.3 Trillion Rout(抜粋)

--取材協力:Joanne Wong、Vrishti Beniwal.

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