(ブルームバーグ):10日の日本市場は債券が下落し、長期金利(新発10年債利回り)は1.575%と2008年10月以来の高水準に上昇した。1月の毎月勤労統計でパートタイムを除く一般労働者の基本給の伸びが過去最高を更新したことを受けて売りが膨らんだ。円の対ドル相場は147円台後半に上昇。株式は東証株価指数(TOPIX)が続落した。
毎月勤労統計によると、所定内給与の伸びは一般労働者(パートタイム以外)が前年同月比3.1%増と前月から加速し、比較可能な1994年1月以降で最高となった。
ソニーフィナンシャルグループの宮嶋貴之シニアエコノミストは、一般労働者の賃金の伸びが3%を上回るのは「相当強い」と語る。ドイツの財政拡大への転換を受けた日本の防衛費拡大への懸念やトランプ米大統領の円安けん制などもあり、債券相場の地合いは悪いと指摘。金利上昇の材料に反応しやすくなっていると言う。
債券
債券相場は下落。1月の毎月勤労統計を受けて日本銀行の利上げ観測が強まり、売りが優勢だった。10日に行われた5年債入札が弱めの結果となったことも相場の足を引っ張った。
入札は最低落札価格が99円67銭と予想(99円73銭)を下回り、応札倍率は3.17倍と2022年6月以来の低水準となった。りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは、日本の証券会社が年度末で損益が振れるのを避けるため、積極的な売買を控えている可能性があると述べた。
スワップ(OIS)市場では5月1日の金融政策決定会合での利上げ確率が3割近くに上昇した。藤原氏は「日銀が利上げを前倒しするのではないかとの思惑が出始めており、5月会合は無風ではなくなってきたと皆が思い始めている」と言う。
新発国債利回り(午後3時時点)
為替
円相場は1ドル=147円台後半に上昇。米国の景気減速懸念や日銀の利上げ観測を背景にドル売り・円買いが優勢だ。一時147円ちょうど付近まで上昇し、前週末の海外市場で付けた24年10月以来の高値(146円95銭)に接近する場面もあった。
東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、日銀の追加利上げの思惑で円金利が上昇していることに加え、投機筋の円ロングポジションが歴史的な水準まで積み上がっており、「海外勢を中心に円高に対する思惑が強いようだ」と語る。ただ、その割に円高が進んでおらず、どこかで円買いポジションの巻き戻しが入る可能性があるとみている。
株式
株式相場はTOPIXが続落した。米国の雇用統計が予想を下回ったことやトランプ米政権による関税発動を控え、米国経済の先行きが警戒された。ソニーグループや任天堂のほか、良品計画、サンリオなど年初来のパフォーマンスが高い銘柄に売りが出た。
SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長は、米経済とトランプ氏の政策の先行きが読みづらく、投資家は世界的に資金を動かすインセンティブがないと述べた。
一方、半導体関連株が買われて日経平均は反発。レーザーテックは10%高と、昨年8月以来の上昇率で取引を終えた。岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは、この日は半導体関連のネガティブな材料が特になく、短期的に下げ過ぎた反動で水準訂正が始まっているとの見方を示した。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:船曳三郎、アリス・フレンチ、長谷川敏郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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